障がいや持病のある方が、自分の体調や特性に合わせて働きたいと思ったとき、選択肢のひとつとなるのが「就労継続支援A型・B型事業所」です。
どちらも、長時間の勤務が難しい方や、職場のルール・コミュニケーションなどに不安がある方に、働く機会とスキルアップのためのサポートを提供する制度です。通所して働く方法のほか、在宅ワークに対応している事業所もあります。
A型とB型は同じ「就労継続支援」でも、目的や仕組みに大きなちがいがあります。
この記事では、それぞれの特徴や法律的な背景、地域による支援の違い、そして在宅ワークなど新しい働き方の可能性をわかりやすく紹介します。
自分に合った働き方を見つけるためのヒントとして、ぜひ参考にしてください。
就労継続支援とは

「就労継続支援」という言葉を聞くと、漢字が6文字も並んでいて、少しむずかしそうに感じる方も多いかもしれません。でも、言葉を分けてみるとシンプルです。
「就労」は「働くこと」、「継続」は「続けること」、「支援」は「支えること」。
つまり「就労継続支援」とは、障がいや病気のある方が、働き続けることを支える制度のことを指します。この制度のなかに「A型」と「B型」があり、それぞれに目的や仕組みが少しずつ異なります。
この章では「就労継続支援」という制度がどんな目的や背景で作られたのか、そして法律の上でどんな権利が守られているのかをわかりやすく説明します。
制度の背景を知ることで、自分に合った働き方を考えるヒントにしてみてください。
就労継続支援の目的と背景

就労継続支援の目的は「一般企業で働くことがむずかしい人が、働く練習をしながらスキルを身につけること」にあります。障がいや病気のある人が社会の中で働くことで、生活リズムを整えたり、人との関わりを通してコミュニケーションのコツや報連相(報告・連絡・相談)の大切さを学んだりします。そうした日々の経験を通して、自分の長所や苦手なことに気づき、「自分らしい働き方」を見つけていくことが、この制度の大きな目的です。
このような制度の考え方が生まれた背景には、戦後から続く日本の福祉制度の流れがあります。戦後の障害者福祉は「措置制度」と呼ばれる仕組みでした。これは、行政(自治体)が中心となって福祉サービスを「与える」方式で、利用者本人の希望よりも行政の判断によって利用の可否や仕事内容が決められていました。たとえば、行政が「この人には施設での生活が必要だ」と判断すれば、本人の希望にかかわらず施設に入所することが決まる。反対に「必要ない」と判断されればサービスを受けられない時代でした。仕事内容も内職などが中心で、本人の希望や適性を尊重する仕組みとは言えませんでした。
しかし2000年代に入ると、「自分の生活は自分で決めたい」という考え方が広がり、2003年には支援費制度が導入されました。そして2006年に「障害者自立支援法」が施行され、利用者本人と施設・事業所が直接契約を結ぶ現在の仕組みが始まりました。これが「就労継続支援制度」です。それまで「作業所」や「授産施設」と呼ばれていた施設も、この法律を機に「就労継続支援事業所」と呼ばれるようになりました。さらに2013年には、地域生活や就労支援をより幅広く支えるために、法律が「障害者総合支援法」へと変わり、今の制度につながっています。


■関連リンク
就労継続支援に関連する法律と障害者の権利

就労継続支援制度は「障害者総合支援法」をもとに設けられた福祉サービスです。この法律のもとで、障がいや病気のある方が社会の一員として自分らしく働けるよう、支援の仕組みが整えられています。
就労継続支援に関わる法律には、A型・B型のどちらにも共通して適用されるものと、雇用契約を結ぶA型のみに関係するものがあります。たとえば、福祉サービスの根拠となる「障害者総合支援法」は両方に共通しますが、労働契約や職場の安全、人権に関する法律はA型に主に関係します。
またA型を中心とした雇用の場では、企業や事業所に雇用の義務・差別の禁止・合理的配慮の提供を定めた「障害者雇用促進法」が関わってきます。さらに、事業所での人権の尊重やハラスメント防止、安全な職場環境の整備も法律によって義務づけられています。
こうした複数の法律によって、就労継続支援制度は「福祉サービス」であると同時に、「安心して働ける職場」をつくるための仕組みとして支えられています。法律や権利の保障の背景を知ることで、自分に合った働き方を選ぶ際の判断材料にしてみてください。
① 福祉サービスの根拠(就A,就B)
就労継続支援A型・B型は、障害者総合支援法にもとづく「障害福祉サービス」です。障害や病気などの理由で一般企業に勤めることが難しい人に対し、働く機会をつくり、スキルを高めるための支援を行うことを目的としています。A型・B型ともに障害者総合支援法5条ならびに施行規則6条の十に基づいて設置・運営され、行政が定めた基準のもとで事業が行われています。
②障害者に対する差別の禁止・合理的配慮(就A)
障害者雇用促進法34条〜36条は企業や事業所が障害のある人を雇用する義務を定め、同時に差別の禁止と合理的配慮の提供を義務づけています。たとえば「通勤時間の配慮」「静かな作業環境」「作業手順をわかりやすく伝える工夫」などは合理的配慮にあたります。一般就労への移行支援にもこの考え方が反映されています。
③ 労働者の安全、ケガや病気の防止(就A)
労働安全衛生法3条は、ケガや病気を防ぎ、安心して働ける職場をつくるためのルールです。就労継続支援A型・B型でも、作業内容に合わせた安全管理や衛生対策を行うことが求められます。たとえば、危険な作業の前に十分な説明をしたり、体調に配慮した勤務を組むことなどが該当します。
④ セクハラ防止(就A)
男女雇用機会均等法11条は、セクシュアルハラスメント(セクハラ)を防ぐために、事業所が対策を取る義務があると定めています。就労継続支援事業所でも、性別や障がいの有無に関係なく、誰もが尊重される職場づくりが必要です。
⑤ パワーハラスメント防止(就A)
労働施策総合推進法30条の2では、パワーハラスメント(パワハラ)を防止するために、事業主に対策を義務づけています。たとえば、怒鳴る・無視する・過剰な仕事を押しつけるなどの行為はパワハラにあたります。就労継続支援の現場でも、指導や支援の名を借りたハラスメントが起きないよう、相談体制を整えることが大切です。
⑥ 最低賃金の保証(就A)
A型事業所では雇用契約を結ぶため、労働基準法28条と最低賃金法4条が適用されます。地域ごとに定められた最低賃金以上の給与を支払う義務があり、時間給として計算されます。利用者の勤務時間・作業内容・成果にかかわらず、最低賃金を下回る賃金を支払うことは認められていません。
⑦ 障害者虐待防止 (就A,就B)
障害者虐待防止法は、障害のある人への身体的・心理的・経済的虐待などを防ぐための法律です。就労継続支援A型・B型の職員は、利用者の尊厳を守り、不適切な言動や過剰な指導が行われないよう努める義務があります。万が一、虐待が疑われる場合には、自治体への通報や相談が必要です。
これらの法律は、就労継続支援の場を「安心して働ける場所」として守るための大切なルールです。
事業所や職員がこのルールを正しく理解し、順守することで、安全や人権が守られ、利用者の皆さんも安心して働くことができます。これらの法律に基づいた取り組みが、施設内での信頼関係やより良いコミュニケーションにつながります。
なお、各条文は記事の最後に掲載していますので、併せてご確認ください。
A型事業所の特徴と働き方

就労継続支援A型は、雇用契約を結んで働くことができる就労支援の制度です。障がいや病気があっても、支援を受けながら一般企業に近い環境で働くことができるのが特徴です。
A型では、雇用契約を結ばないB型とは異なり、各都道府県で定められた最低賃金が保障されています。また、A型事業所を退所したり、B型に移行したりする際には、条件を満たせば雇用保険(失業手当)の対象にもなります。
この章では、A型の利用対象者と利用条件、雇用契約と給与の仕組み、主な仕事内容、一般就労へのステップアップ事例について、具体的に紹介していきます。
A型事業所の利用対象者・期限・条件と求められる力
A型事業所の利用対象者と利用期限と利用条件は以下の通りです。
(出典:厚生労働省 老健局総務課『就労継続支援A型事業』[平成26年9月25日 資料1-4-2])
利用対象者
原則18歳~65歳未満の方
利用条件
- 就労移行支援事業を利用したが、企業等の雇用に結びつかなかった
- 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった
- 就労経験はあるが企業を離職しており、雇用関係がない
- 企業等での働き始めに勤務時間を段階的に増やしていく場合、休職から復職を目指す場合
利用期限
原則無期限であるが、支給決定は概ね1年ごとに更新され、利用の適否は定期的に見直される
A型事業所での主な仕事内容(軽作業・清掃・PC関連など)
厚生労働省の令和5年度調査によると、全国のA型事業所で最も多い仕事は「軽作業[部品の組立・検品・袋詰めなど](50.9%)」で、全体の約半数を占めています。
次いで多いのは「清掃(30.2%)」、「PC関連業務(データ入力やWeb制作など・19.9%)」、「農業や施設外での作業(14.3%)」、「弁当・惣菜づくり(10.5%)」「雑貨製造・縫製(10.5%)」です。(出典:厚生労働省 令和5年度 障害者総合福祉推進事業 調査研究報告書)
このようにA型事業所では、コツコツと取り組む軽作業から、パソコンを使うクリエイティブな仕事まで、さまざまな職種があります。これからA型で働いてみたいとお考えの方は、自分の得意や興味に合った仕事を見つける参考にしてみてください。
軽作業(組立・検品・袋詰めなど)
製品の部品を組み立てたり、完成品の検品や袋詰めをしたりする作業です。決められた手順でコツコツ進める仕事が多く、集中して作業に取り組みたい人に向いています。体力やペースに合わせて作業量を調整できるため、A型事業所でも最も多く取り入れられています。
清掃業務
オフィスや施設、店舗などの掃除を行う仕事です。チームで協力しながら作業することが多く、体を動かすことが好きな方に向いています。屋内外どちらの作業もあり、地域社会との関わりを持ちながら働ける点も特徴です。
PC関連(入力・Web制作など)
データ入力やチラシ作成、ホームページの更新など、パソコンを使う業務です。事務作業やデザイン、ライティングなど幅広い内容があり、パソコンスキルを生かしたい方に人気です。在宅ワークを取り入れるA型事業所も増えています。
農業・園芸
野菜や花の栽培、収穫、出荷準備などを行う仕事です。自然の中で体を動かしながら働ける点が魅力で、季節ごとの変化を感じられるのも特徴です。天候に左右されやすい分、チームで協力して作業する力が身につきます。
弁当・惣菜づくり
調理補助や盛り付け、配達など、食品関連の業務です。衛生管理や時間管理などの基本を学びながら働けるため、将来的に飲食業を目指す人にも人気があります。地域のお客様との交流が生まれやすい職種です。
雑貨製造・縫製
布小物やアクセサリーなどを手作業で制作する仕事です。手先を使う細かい作業が得意な人に向いており、作品が商品として販売されるやりがいもあります。クリエイティブな活動を通して達成感を得やすいのが特徴です。
A型事業所の仕事を通して得られるのは、技術や経験だけではありません。自分のペースで働きながら「できること」を少しずつ増やし、社会とのつながりや自信を育む場でもあります。焦らず続けることで、将来のステップアップや自分らしい働き方を見つけるきっかけになるでしょう。
A型事業所の雇用契約と賃金と社会保険の仕組み

ここからは、A型事業所の利用者が結ぶ雇用契約、受け取る賃金、そして社会保険の加入の仕組みについて解説します。
繰り返しになりますが、A型事業所は福祉サービスでありながら、労働者として雇用契約を結んで働く場です。そのため、働くことで得られる賃金は、利用者一人ひとりの生活スタイルや価値観に応じて、さまざまな形で活用されます。たとえば、生活費やグループホームの利用料だけでなく、趣味や娯楽、旅行、学びの機会、さらに貯金や将来の自立資金としても利用されることがあります。
また、一定の就労条件を満たせば社会保険にも加入できます。これにより、仕事中やプライベートでの病気やけがの保障、さらに退所した場合の失業保険の給付も受けられます。
さらに、前節(1-2)でも触れたとおり、A型事業所では人権が尊重された安心の環境で働くことができます。こうしたしくみを具体的に見ていきましょう。
① 雇用契約書を結ぶ(労働者として扱われる)
A型事業所では、利用者と事業所のあいだで雇用契約書を結びます。
そのため、法的には「労働者」として扱われ、一般の会社で働く人と同じように労働基準法や最低賃金法などの労働関係法令が適用されます。
契約書には、勤務時間・業務内容・賃金・休暇などの条件が明記され、利用者(=労働者)はその条件に基づいて働きます。
➁ 最低賃金の保障と給料の支払いがある
A型事業所では、都道府県ごとに定められた最低賃金以上の時給が必ず支払われます。
たとえば、静岡県であれば時給1,097円以上(※2025年10月時点の地域最低賃金に準ずる)などです。賃金は、一般的に月1回以上、本人の口座に振り込まれる形で支払われます。
出勤日数や作業時間に応じて給与が計算され、欠勤・遅刻・早退があればその分は控除されます。有給休暇を取得した場合は、通常どおり賃金が支払われます。
このように、A型事業所では「訓練」ではなく「労働」に対して賃金が支払われるのが大きな特徴です。
③ 社会保険・雇用保険に加入できる
A型事業所の利用者は、雇用形態や労働時間によって社会保険・雇用保険に加入します。

加入条件を満たした場合、事業所が保険料を一部負担し、利用者も給与から控除される形で支払います。これにより、万が一のけがや病気、失業時などに備えることができます。
④ 休暇・勤務シフト・人事評価がある
A型事業所では、働き方や勤務時間、休暇制度も一般企業に近い形で運用されます。
勤務シフト:週4〜5日・1日4〜6時間が多く、事業所の業務内容に応じてシフトを調整。
休暇:労働基準法に基づき、6か月以上勤務した場合は有給休暇(年次有給休暇)が発生します。
人事評価:作業の正確さ、勤務態度、協調性などをもとに定期的に評価が行われ、昇給や職務内容の見直しにつながる場合もあります。
こうした仕組みにより、A型事業所は福祉サービスでありながらも「職場」としての機能を持っています。働く経験を積むことで、一般就労へのステップアップを目指すことも可能です。
A型事業所の選び方と利用開始まで
A型事業所は、障がいや病気があっても「働く力を育てながら、一般就労につなげるステップ」として利用できる施設です。しかし、事業所ごとに仕事内容や支援体制、雰囲気は異なります。自分に合った事業所を選び、安心して利用を始めるためには、仕事内容や支援体制、通いやすさ、各事業所の給与の仕組み、そして職場の雰囲気までしっかり確認することが大切です。ここでは、A型事業所を選ぶポイントと、利用開始までの流れをわかりやすく解説します。
A型事業所で働くための目安

A型事業所は雇用契約を結んで働くため、「働く力」と「仕事を続けたい意欲」が求められます。まずは以下の点を参考に、自分が実際に働けるかイメージしてみましょう。
- 職員の説明や指示を理解し、作業を進められること
- 他の利用者や職員と協力しながら、コミュニケーションをとって仕事ができること
- 決まった時間に通い、体調を整えながら安定して通所できること
- 週4〜5日ほど働ける体力や集中力があること
■関連リンク
A型事業所を選ぶときのポイント

A型事業所は事業所ごとに仕事内容や支援体制が異なります。自分に合った事業所を選ぶために、以下の点を確認してみましょう。
① 仕事内容
確認ポイント:作業の内容や流れを事業所に聞く/体験利用で作業を試す
具体例
- 事務:請求書入力やデータ整理ができるか
- 清掃:掃除範囲や手順が自分に負担がないか
- 製造・軽作業:製品組み立てや検品の作業量が自分に合うか
➁ 職員による支援体制
確認ポイント:体調やメンタルの相談窓口があるか/職員がどのように声かけしてくれるか
具体例
- 体調不良時の休憩や早退の対応
- 作業の進め方や手順のサポート
- ストレスや困りごとへの声かけや相談のしやすさ
③ 通いやすさ・勤務時間
確認ポイント:自宅からの所要時間や通勤手段、勤務時間の柔軟性
具体例
- 徒歩や公共交通機関で無理なく通えるか
- 午前・午後のみなど短時間勤務の選択肢があるか
- 体調や通院スケジュールに合わせて調整可能か
④ 給与・昇給の仕組み
確認ポイント:工賃や給与の計算方法、昇給の条件
具体例
- 作業量や時間に応じて計算されているか
- 昇給や手当の条件が明確か
- 給与明細がわかりやすく、納得できるか
⑤ 事業所の雰囲気
確認ポイント
- 実際に見学や体験を通して、作業環境や人間関係を観察する
- 職員や利用者とのやり取りが自分に合うかチェックする
- 自分が毎日ここで働くイメージを持てるか確認する
具体例
- 作業中の利用者の表情や集中度を観察する
- 利用者同士や職員との会話の雰囲気を確認する
- 「忙しすぎて余裕がなさそう」「静かすぎて孤立しそう」など、自分にとって過ごしやすい空気かをイメージする
- 職員が親切・丁寧に説明してくれるか、質問に具体的に答えてくれるか、体調や意見に配慮してくれるかを確認する
- 休憩室や作業スペースの音・明るさ・広さが自分に合うか確認する
- 体験利用や短時間勤務で実際の作業や人間関係に慣れてみる
- 他の利用者から「働きやすい点」「困った点」を聞いて、雰囲気や支援状況を具体的に知る
■関連リンク
利用開始までの流れ

① 相談支援専門員やハローワークに相談する
A型を利用したい気持ちを伝え、希望条件に合う事業所を紹介してもらいます。
➁ 事業所の見学・体験を行う
実際に現場を見て、仕事内容や職員の対応、職場の雰囲気を体験します。
その際に、自分の体力・通所リズムが合うかも確認しておきましょう。
③ 利用可否の確認と申請手続き
見学や体験の結果をもとに、相談支援事業所、ハローワーク、希望するA型事業所が、あなたがA型の条件(事業所で働くための目安)を満たしているかどうかを確認します。
これらの情報を踏まえ、最終的に市区町村がA型の利用を認めるかどうか(受給者証の交付)を決定します。
※そのため、希望すれば必ず利用できるわけではない点にも注意が必要です。
④ 利用契約・雇用契約を結ぶ
利用が決定したら、事業所と契約を結び、正式にA型の利用者(労働者)として働き始めます。勤務時間や体調面については、職員と相談しながら無理のないペースで進めていきましょう。
A型事業所は、「働く力を育て、一般就労へつなげるためのステップ」として大切な場所です。焦らず、自分に合った事業所と支援者を見つけることが、次のステップを目指す一歩になります。
A型事業所から一般就労へのステップアップの方法

A型での仕事に少しずつ慣れてくると、 「このままここで働き続けていいのかな?」
「いつかは一般企業で働いてみたいけど、体調や人間関係が心配…」
そんな気持ちが芽生えてくる方も多いと思います。
ここでは、A型から一般就労へステップアップするための考え方や方法をわかりやすく紹介します。焦らず、自分のペースで進められる道を一緒に見つけていきましょう。
ステップ① A型で基礎スキルをつける
円滑に作業を進める力や、他の利用者・職員とのコミュニケーション力を少しずつ高めていきましょう。体調を整えながら安定して通所し、週4〜5日ほど働ける体力や集中力を、時間をかけて身につけていくことが大切です。作業での課題が減り、「そろそろ次のステップに進めそうだ」とあなたや支援員が感じられるようになったときが、一般就労を検討する最適なタイミングです。
ステップ➁ 一般就労へのステップアップ先を選ぶ
A型で働きながら「次はどう進めばいいか」と考えるとき、進む道は主に3つあります。
それぞれの特徴と判断ポイントを見て、自分に合ったステップを見つけましょう。
ハローワークの職業訓練を受ける
ハローワークは障害のある方の就職活動をサポートする公共機関です。求人の紹介や職業相談、資格取得や職業訓練の案内を受けることができます。
★向いている人
・働く力はついてきたけれど、専門的なスキルを身につけたい
・資格やパソコンスキルを取得して、選べる仕事の幅を広げたい
★特徴
・一般就労を目指す前提で、スキルアップに集中できる環境
・障害の有無に関係なく、誰でも応募できる訓練コースがある
・「事務」「製造」「介護」「IT」など、職種別のスキルを学べる
★判断ポイント
・体調や通所が安定している
・就職意欲が高く、3〜6か月程度学ぶ集中力がある
・支援が少なくても自分で通学・学習を続けられる
A型で働く習慣が安定していて、さらにスキルアップしたい人に最適です。
就労移行支援事業所に通所する
就労移行支援事業所とは一般企業での就労を目指す方が通う施設で、履歴書作成や面接対策、企業での体験(実習)、生活リズムやストレス対処の支援など、就職準備全般をサポートします。
★向いている人
・一般就労したいけれど、就職活動のやり方がわからない
・企業で働いた経験が少なく、不安がある
・自分に合う職場を見つけたい
★特徴
・履歴書作成・面接・企業実習など、就職に向けた準備を支援員と一緒に進められる
・生活リズムやストレス対処などのサポートも受けられる
・実際の企業で体験(実習)しながら、働けるかどうか確認できる
★判断ポイント
・A型での仕事はこなせるが、就職活動の経験が少ない
・就職後の不安が大きく、サポートを受けながら進めたい
・自分の強み・弱みを整理しながら進めたい
A型から一歩進んで「就職準備」を整えたい人におすすめです。
A型から一般就労を目指す
A型から直接、一般就労を目指すこともできます。
★向いている人
- A型での仕事に自信がついた
- 職場でのコミュニケーションや勤務リズムが安定している
★特徴
- 一般企業で求められる基本スキルがある
- 体調・生活リズムが安定していて、自主的に就活ができる
- 支援よりも自分で動く方が合っているタイプ
★判断ポイント
- A型で週5日働けており、勤務評価も安定している
- 支援なしでも通勤・業務・報連相ができる
不安や緊張をあまり感じることなく、自分の意思でハローワークへの通所・求職や企業説明会への参加ができる人におすすめです。
ハローワークの職業訓練と就労移行支援は、目的や通所時間を調整すれば併用可能です。
職業訓練でスキルを学びつつ、就労移行支援で面接対策や企業実習を行う、といった形が考えられます。
一方、直接一般就労を目指す場合はフルタイム勤務との両立が難しいこともあります。
無理なくステップアップするためには、目的や体調、学習・実習の負担を考えながら、支援員やハローワークに相談して計画を立てることが大切です。
ステップ③ 一般企業への就職
職業訓練、就労移行支援、A型を経て、一般企業で働き始めるタイミングと手続きを確認しましょう。
職業訓練から一般就労へ
★就職のタイミング
- 訓練で身につけた専門スキルがある程度習得できたとき
- 就職先の求人条件に合うスキル・資格が揃ったと感じたとき
★就職の手続き
- ハローワーク(障害者職業相談室)で求人を探し、応募手続きを行う
- 応募書類の提出や面接日程の調整などを進める
■関連リンク
就労移行支援から一般就労へ
★就職のタイミング
- 支援員と一緒に履歴書・面接・企業実習を行い、就職準備が整ったとき
- 生活リズムや体調管理が安定しており、就職活動を自分で進められる状態
★就職の手続き
- 支援員と履歴書や職務経歴書を作成
- 希望企業に応募、面接同行やサポートも受けながら進める
A型から直接、一般就労へ
★就職のタイミング
- A型での勤務が安定し、週5日働ける体力や集中力がついたとき
- 職場でのコミュニケーションや勤務リズムが整い、自信を持って働けると感じたとき
★就職の手続き
- 自分で求人を探し、応募書類提出・面接を行う
- 不安があればハローワークや就労定着支援で相談しながら進める
ステップ④ 就労定着支援の支援を受けながら仕事を長続きさせる

就職後も安心して働き続けるために、定着支援という制度があります。
障害者総合支援法に基づく就労定着支援事業所が提供するサービスで、A型から一般企業に就職した後に利用可能です。
企業とは独立して支援を行い、職場での困りごとや体調・生活リズムの相談、職場との調整などをサポートしてくれます。
多くの場合、最寄りの市区町村の障害福祉窓口や就労支援機関を通じて利用申請をします。
就職しても一人で悩まず、専門の支援員と相談しながら長く働けるようにする環境を作ることが大切です。
どのステップを選ぶかは人それぞれですが、大切なのは「焦らず自分のペースで進めること」です。A型での経験や職業訓練、就労移行支援を通じて身につけた力を活かし、必要に応じてハローワークや就労定着支援を活用することで、安心して一般企業での仕事を続けることができます。
一歩ずつ着実に進むことで、あなたに合った働き方や職場を見つけ、長く安定して働ける環境を作ることができます。就職はゴールではなく、よりよく働くためのスタートです。支援を上手に活用しながら、自分らしい働き方を実現していきましょう。
B型事業所の特徴と働き方

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに働くことができる就労支援の制度です。体調の波があったり、長時間の勤務や会社のルールになじむことが難しい方でも、自分のペースで仕事の練習をしながら、働くリズムやスキルを身につけることを目的としています。
B型では、A型のように雇用契約を結ばないため、最低賃金の保証はありません。ただし、利用者個人の作業の成果に応じて「工賃(こうちん)」と呼ばれる報酬が支払われます。この工賃は事業所によって異なり、平均すると月1万〜2万円前後が多い傾向です。
B型事業所では、軽作業のほか、パソコン入力やデザイン、カフェ・農作業など、地域や事業所の特色をいかした多様な仕事が行われています。
この章では、B型の利用対象者と利用条件、工賃の仕組み、主な仕事内容とA型・就労移行へのステップアップ事例について、くわしく解説していきます。
B型事業所の利用対象者と利用条件

B型事業所の利用対象者と利用期限、利用条件は以下の通りです。
利用対象者
原則18歳以上の方で、就労に向けた支援を必要とする方
※A型と異なり65歳以上の方も利用できます。
利用期限
原則無期限で、支給決定は概ね1年ごとに更新されます。
利用の適否や作業内容については、定期的に見直されます
利用条件
- 一般企業での雇用が困難で、まずは生活リズムや作業習慣を身につけたい方
- 就労経験はあるが、体調や障がいの影響で安定した就労が難しい方
- 就労移行支援やA型事業所の利用を目指す前に、基礎的な作業経験や社会参加を重ねたい方
B型事業所で働くための目安
B型事業所では、A型のように「ある程度の働く力」や「週4〜5日働ける体力・集中力」を求められることはありません。利用者の状態に合わせて柔軟に通所できるため、次のような状況の方も安心して利用できます。
- 週1日・1時間から通所を始めたい方
- 作業の理解や指示に時間がかかる方
- 感情のコントロールや対人コミュニケーションが苦手な方
- 体調や集中力に波がある方
B型事業所では、無理のない範囲で作業や活動を体験しながら、生活リズムや働く習慣を少しずつ身につけることができます。こうした経験を通して、将来的にはA型事業所や就労移行支援事業所、一般企業へのステップアップも目指せます。
B型事業所の主な作業内容(軽作業・清掃・雑貨製造など)

厚生労働省の令和5年度調査によると、全国のB型事業所で最も多い仕事は「軽作業[部品の組立・検品・袋詰めなど](63.6%)」で、全体の約6割を占めています。
次いで「清掃(27.8%)」「雑貨製造・縫製(23.1%)」「菓子製造(15.2%)」「農業(12.0%)」が上位に挙がっています。(出典:厚生労働省 令和5年度 障害者総合福祉推進事業 調査研究報告書)
このようにB型事業所では、体調や生活リズムに合わせて作業時間や内容を調整しながら、無理なく働ける仕事が多く取り入れられています。ここでは主な仕事内容を紹介します。
軽作業(組立・検品・袋詰めなど)
小さな部品を組み立てたり、完成品を検品・袋詰めしたりする作業です。決められた手順にそってコツコツ進める内容が多く、集中して取り組みたい方に向いています。体調やペースに合わせて作業量を調整できるため、B型事業所でも最も多く取り入れられています。
清掃業務
施設やオフィス、店舗などの掃除を行う仕事です。モップがけやごみの回収など、体を動かす作業が中心で、屋内外どちらの現場でも行われます。チームで協力しながら進めるため、社会性を育てやすい仕事でもあります。
雑貨製造・縫製
布小物やアクセサリーなどを手作業で制作する仕事です。裁縫やクラフトなど、手先を使う作業が好きな方に向いています。自分の作った作品が販売される喜びや、達成感を味わえるのも魅力です。
菓子製造
クッキーやパンなどのお菓子を作る仕事です。材料の計量、成形、包装など、複数の工程に分かれており、作業を通して責任感やチームワークを学ぶことができます。地域のイベントで販売するなど、交流の機会も多い職種です。
リサイクル(空き缶・ペットボトル・廃材など)
空き缶やペットボトル、古紙などを回収・分別し、再資源化のために仕分けや清掃を行う仕事です。環境にやさしい活動に関わることができ、地域や企業との協力を通して社会貢献を実感できるのが特徴です。立ち作業が中心ですが、軽作業が多く、体力やペースに合わせて無理なく取り組めます。チームで役割を分担しながら作業するため、協調性を学ぶ場にもなります。
B型事業所の仕事は、働く力を少しずつ育てながら、自信や生活リズムを整える場でもあります。作業を通じて「得意なこと」「好きなこと」を見つけ、自分に合った働き方へとつなげていくことができます。焦らず、自分のペースでステップアップしていくことが大切です。
B型事業所の工賃の仕組み

B型事業所では、事業所が行う作業(下請け作業や自主製品の販売など)で得た収益の一部が、利用者に「工賃」として分配されます。つまり、事業所の収益が多いほど、支払われる工賃も高くなるしくみです。
ただし、B型事業所の目的は「働くことそのもの」ではなく、働く習慣づくりや社会参加の支援にあります。A型のように雇用契約を結ぶわけではなく、あくまで「福祉サービスとして作業を提供している」形です。そのため、支払われるのは賃金ではなく、作業への感謝や成果の分配としての「工賃」となります。
工賃額は事業所によって大きく異なります。厚生労働省の令和5年度データでは、全国平均は月額23,053円(出典:厚生労働省 令和5年度工賃(賃金)の実績について)です。
下請け作業(封入・部品組み立てなど)が中心の事業所では工賃が低くなる傾向がありますが、反対に、次のような事業所では比較的高い工賃が期待できます。
- 企業との委託・請負作業が安定している(例:自動車部品・電子機器など)
- 焼き菓子やパン、雑貨など、自主製品の開発・販売に力を入れている
- IT・デジタル作業など、新しい分野を取り入れている
- 支援員が経営感覚を持ち、生産性や商品の質を高める工夫をしている
ただし、工賃の金額だけで事業所を選ぶのはおすすめできません。なぜなら、B型事業所でいちばん大切なのは「安心して通えること」「働く自信を少しずつ取り戻せること」だからです。作業内容や事業所の雰囲気、人との関わり方が自分に合っているかどうかが、長く続けるための一番のポイントになります。
働く経験を重ねていけば、同じ事業所内でのステップアップや転所による挑戦もできます。
工賃はその結果として少しずつ上がっていくものですから、焦らず、自分のペースで「働く力」を育てていくことが大切です。
B型事業所の選び方と利用開始まで

B型事業所は、体調や障がいの特性に合わせて「自分のペースで働く練習ができる場所」です。雇用契約を結ばずに作業を行うため、働くことに慣れたい方や、一般就労を目指す前にステップを踏みたい方にも利用しやすいのが特徴です。
ただし、B型事業所ごとに作業内容や支援の手厚さ、雰囲気などは大きく異なります。
安心して通い続けるためには、工賃の金額だけでなく、「自分に合った環境かどうか」をしっかり確認することが大切です。
ここでは、B型事業所を選ぶときのポイントと、利用開始までの流れをわかりやすく解説します。
B型事業所を選ぶときのポイント
B型事業所は、それぞれが異なる特色を持っています。以下のポイントを意識して、自分に合う事業所を探してみましょう。
① 作業内容
確認ポイント: 作業の種類・ペース・難易度が自分の体調や得意に合っているか。
具体例
- 軽作業(封入・シール貼りなど)は集中力の練習に向いている
- 製造・食品加工はチームで作業することが多い
- パソコン作業(データ入力・デザインなど)は在宅にもつながりやすい
など、見学や体験で実際に作業を試してみることで、自分に無理のない働き方を見つけやすくなります。
➁ 職員の支援体制
確認ポイント: 体調やメンタル面で困ったとき、どのようにサポートしてもらえるか。
具体例
- 作業ペースを調整してもらえるか
- 休憩や早退がしやすい雰囲気か
- 悩みや不安を話しやすそうな職員がいるか
支援員との相性や、相談のしやすさは、自分の体調や利用者同士の関係・事業所での悩みを聞いてもらうことで長く続けるためのきっかけになるので、とても重要です。
③ 通いやすさ
確認ポイント: 無理なく通える距離・時間かどうか。
具体例
- 自宅から通いやすい立地・交通手段があるか
- 週何日・何時間から利用できるか
- 午前のみ・午後のみなど柔軟な通所が可能か
自分の体調に無理のない通所リズムをつくることが、安定した利用につながります。
④ 工賃の仕組み
確認ポイント: 工賃の支払い方法・算出の基準が明確か。
具体例
- 作業量や出勤日数によって計算されているか
- 月ごとの平均工賃や実績を説明してもらえるか
ただし、工賃の金額だけで判断せず、「自分のペースで安心して通えるか」を重視することが大切です。
⑤ 事業所の雰囲気
確認ポイント: 実際に見学・体験して、雰囲気が自分に合うかどうか。
具体例
- 利用者同士・職員とのコミュニケーションが穏やかか
- 作業場の明るさや音の大きさが落ち着けるか
- 職員が丁寧に説明してくれるか
- 「ここなら通えそう」と感じられるか
B型事業所は「働く練習の場」であると同時に、「安心して過ごせる居場所」でもあります。見学や体験利用を通して、実際の雰囲気をしっかり確かめましょう。
■関連リンク
利用開始までの流れ
① 相談支援専門員や市区町村の窓口に相談する
B型事業所を利用したい気持ちを伝えると、希望条件に合う事業所を紹介してもらえます。
体調や生活の状況も踏まえて、一緒に利用計画を立てていきます。
② 事業所の見学・体験を行う
気になる事業所をいくつか見学し、実際の作業内容や支援の様子を体験します。
見学の際には「ここなら続けられそうか」「職員に相談しやすいか」を意識してチェックしましょう。
③ 受給者証の申請・交付
利用を希望する事業所が決まったら、各市区町村の福祉課で「障害福祉サービス受給者証」を申請します。このとき、相談支援専門員や事業所の職員が手続きのサポートをしてくれます。
④ 利用契約を結び、通所スタート
受給者証が交付されたら、事業所と正式に契約を結びます。
初めは短時間や週数日から始め、体調や生活リズムに合わせて少しずつ通所時間を増やしていくケースも多いです。
B型事業所は、「働くことを通して少しずつ自信をつけていく場所」です。
作業や人との関わりを重ねながら、自分の強みやできることを見つけていく中で、日々の生活にも前向きな変化が生まれます。
安心できる環境の中で、自分らしい働き方を育てていきましょう。
B型事業所からA型事業所・一般就労へのステップアップ方法

B型事業所での作業に慣れてくると、「もっと働く時間を増やしたい」「自分の力を試してみたい」という気持ちが少しずつ芽生えてくる方も多いと思います。
B型は、自分のペースで働くことを大切にしながら、作業スキルや生活リズムを整える場です。ここで基礎を固めたあと、A型事業所(雇用契約のある働き方)や一般企業での就職へステップアップすることも可能です。
ここでは、B型から次のステップへ進むための考え方と方法を紹介します。
焦らず、自分のペースで進められる道を一緒に見つけていきましょう。
ステップ① B型で「働く基礎」を身につける
まずは、今の事業所でできることを少しずつ増やしていきましょう。時間を守って通所すること、作業に集中できる時間を増やすこと、職員や他の利用者と協力することなどが大切です。
体調を整えながら週3〜4日ほど安定して通えるようになると、「次のステップ」を考える準備が整ってきます。作業内容や得意・不得意を職員と一緒に振り返り、「もう少し挑戦してみたい」という気持ちが出てきたら、その思いを大切にして、次に進みましょう。
ステップ② A型または一般就労に向けたステップアップ先を選ぶ
B型から次のステップを考えるとき、主に3つの進み方があります。
どの道が自分に合っているかを、支援員や家族と一緒に考えてみましょう。
直接、A型事業所・一般就労に移行する
A型事業所・一般就労は、雇用契約を結んで働くことができる場です。B型よりも勤務日数や責任が増えますが、その分、安定した収入と職場経験を得ることができます。
★向いている人
- B型で安定して通所できており、もう少し長く働きたい
- 決まった時間に働く練習をしたい
- 雇用契約を結んで「働く力」を確かめてみたい
★特徴
- 雇用契約があり、最低賃金が保証される
- 勤務時間が長く、週4〜5日働くケースが多い
- 支援員が職場での悩みをサポートしてくれる
★判断ポイント
- 体調が安定しており、通所の遅刻・欠席が少ない
- 作業指示を理解して、一人で進められることが増えた
- コミュニケーションが取りやすくなってきた
B型で基礎を積み、働くリズムが安定してきた人にとって、A型・一般就労は次のステップに最適です。また、A型を希望される方には「多機能型事業所」と呼ばれるB型、A型両方が運営されている事業所があり、B型と同じ支援員さん・同じ事業所に相談・支援を継続してもらうこともできるので、ステップアップを早い段階から考えられている方にはおすすめです。
就労移行支援事業所に通所する
就労移行支援事業所は、一般企業での就職を目指すための「就職準備」をサポートする施設です。 履歴書の書き方、面接練習、企業での実習など、就職活動全般を支援してもらえます。
★向いている人
- B型から直接就職するのは不安だが、就職を目指してみたい
- 働く自信をつけながら、就職活動の練習をしたい
- 自分に合った職場を見つけたい
★特徴
- 就職活動のサポートや企業実習が受けられる
- 生活リズムやストレス対処の支援がある
- 一般就労を見据えた訓練カリキュラム
★判断ポイント
- B型での作業に慣れ、自分の得意・苦手を理解している
- 通所が安定しており、就職意欲がある ・就職活動に向けたサポートを受けたい
就労移行支援事業所は、「働きたい」という気持ちを一歩ずつ形にしていくための場です。
焦らず自分のペースでスキルや自信を積み重ねることで、一般企業への就職や長く働き続けるための土台をつくることができます。B型から次のステップを考える際には、就労移行支援の利用も選択肢のひとつとして検討してみてください。
ハローワークや職業訓練を利用する
ハローワークでは、障害のある方を対象とした求人紹介や職業訓練の案内が受けられます。
パソコン・事務・介護・清掃など、職種別のスキルを身につけるコースもあります。
★向いている人
- 新しいスキルを身につけて就職の幅を広げたい
- 支援を受けながら、自分の力で就職活動を進めたい
★特徴
- 職業訓練を通じて資格や専門知識を得られる
- ハローワーク職員による就職相談が受けられる
★判断ポイント
- B型での生活リズムが安定している
- 一定期間(3〜6か月)学ぶ意欲と集中力がある
職業訓練で身につけたスキルや資格は、自信を持って就職活動を進める大きな力になります。まずはハローワークで相談し、自分の興味や体調に合った訓練コースを探してみましょう。
B型で培った通所習慣や作業ペースを活かしながら、少しずつ一般就労への一歩を踏み出していくことができます。
■関連リンク
ステップ③ A型や一般企業を探す
B型事業所では、支援員が一人ひとりの希望や体調に合わせて、A型や一般企業への進路を一緒に考えてくれます。また、ハローワーク(公共職業安定所)でも、障がいのある方向けの専門相談員が就職相談や求人紹介を行っています。B型事業所の支援員とハローワークをうまく活用することで、自分に合った職場を見つけやすくなります。
ステップ④ A型や一般企業で働き始める
A型や一般企業で働き始めたばかりの時期は、環境の変化に慣れるまで不安を感じることもあります。そんなときは、B型事業所の支援員やハローワークの就職支援ナビゲーターに相談し、仕事の悩みや体調面の調整をサポートしてもらうと安心です。また「就労定着支援」を利用することで、就職後も定期的に面談を行い、職場での困りごとや人間関係、生活リズムなどを一緒に確認してもらえます。この支援を受けることで、無理なく長く働き続けやすくなります。
どの進路を選ぶかは人それぞれですが、共通して大切なのは「人と比べず、自分のペースで進むこと」です。B型で積み重ねた力や生活のペースを土台に、支援員やハローワークと相談しながら、自分に合う働き方を探していきましょう。
就職は終わりではなく、新しいスタートです。あなたらしいペースで、安心して長く働ける未来を築いていきましょう。
就Bカチカから一般就労した、ちぢれストレートさんのエピソード
「働きたい気持ちはあるけれど、一般企業では続かない」「障がいを隠して働くのがつらい」そう感じている方が多いことと思います。
ここではここでは、就労継続支援B型事業所「カチカ」を利用し、一般就労へとつながったちぢれストレートさんのエピソードをご紹介します。
ちぢれストレートさん曰く、障がいをオープンにすることで”自分らしい働き方”が見えてきたそうです。
一般就労の壁に直面。繰り返した離職の日々
ちぢれストレートさんは発達障害とうつ病を抱えながら、これまで一般企業で働いてきました。しかし、どんな職場でも「人間関係」や「体調の波」に苦しみ、1〜2年以内に退職してしまうことが続いたといいます。
「最初は頑張れるんですが、次第に周囲とのズレを感じて、つらくなってしまう。そんなことを何度も繰り返していました」
在宅で業務委託の仕事を受けていた時期もありましたが、障がいを“クローズド”にしたまま働くことに限界を感じていました。体調や気分の変化を隠すことで、かえって心身がすり減っていったといいます。
「障がいをオープンにできる場所」への出会い
そんなときに出会ったのが、就労継続支援B型事業所「カチカ」でした。在宅で働くスタイルを取り入れながら、自分の特性を理解した上で業務に取り組める環境に、ちぢれストレートさんは強く惹かれたといいます。
「障がいを隠さなくていい。それだけで、どれほど心が軽くなったか分かりません」
利用当初は「本当に自分をオープンにして働けるのか」という不安もありましたが、支援員やスタッフが一人ひとりの特性を理解し、その上で業務内容を提案してくれることに大きな安心を感じました。
「評価される喜び」が、自信を取り戻すきっかけに
カチカでの業務は、ちぢれストレートさんがこれまで培ってきた広告運用やWebマーケティングのスキルを活かすものでした。新しいスキルを無理に覚えるのではなく、これまでの経験を再び磨き直す時間が、心の安定にもつながったといいます。
「“障がいがある自分”を受け入れたうえで評価される──その瞬間、世界がパッと開けていくような感覚がありました」
“オープンに働くこと”は不安でもありましたが、それが自分らしく働ける第一歩でもありました。
B型事業所から社員へ。次のステージへ進む勇気
現在、ちぢれストレートさんは「カチカ」の社員として新たな事業立ち上げに関わっています。利用者から職員へとステップアップし、自身の経験を活かして他の利用者の支援にも携わるようになりました。
「ここでなら、障がいがあっても活躍できる。それが実感できたからこそ、次のステップに進む勇気が持てました」
今後の目標は、社会の中でスキルを発揮しながら、安定した収入を得ること。
「年収を上げたい」という現実的な目標も、しっかりと見据えています。
同じように悩むあなたへ──ちぢれストレートさんからのメッセージ
「自分が安心してスキルや能力を発揮できる環境」は、必ずあります。それは就労継続支援B型なのか、就労継続支援A型なのか、どこかはわかりません。自分の特性や障がいをオープンにした状態で能力やスキルを発揮できる環境はありますから、諦めないでください。
■関連リンク
A型事業所とB型事業所の地域ごとの特色と在宅就労の広がり

A型・B型事業所は、地域の産業や環境によって支援内容や仕事内容が大きく変わります。
都市部ではオフィスワークや企業との連携が進む一方、地方では地域の特産品や自然環境を活かした作業が多く見られます。
また、近年は自宅で働ける「在宅型就労」を導入する事業所も増えており、通勤が難しい方にとって新しい選択肢となっています。
この章では、地域ごとの特色と働き方の広がりを見ながら、自分に合ったスタイルを考えるヒントをご紹介します。
地域ごとの特色を知るメリット

A型・B型事業所を選ぶうえで大切なのは、「自分が暮らす地域にはどんな仕事が多いのか」を知ることです。地域の産業構造や雇用の特徴を理解しておくことで、興味のある作業や自分の得意分野を活かせる職場を見つけやすくなります。
たとえば、地元で製造や農業の仕事が盛んな場合、手作業が得意な方にはぴったりの環境かもしれません。一方で、事務作業やパソコン業務に関心がある方は、都市部や在宅ワークに対応した事業所を探すのも一つの方法です。
自分に合う仕事のスタイルを見つける第一歩として、まずは地域ごとの特色を調べてみましょう。次の節では、都市部と地方それぞれの特徴をより具体的に見ていきます。
都市部と地方での違い
A型・B型事業所の作業内容は、地域の「産業構造」によって大きく左右されます。
特にB型事業所では、地域の企業や産業から仕事を受託しているケースが多いため、どのような産業が多いかがそのまま「事業所の特色」につながります。
都市部の特色:企業との連携と事務・IT系業務

東京・大阪・神奈川などの都市部では、オフィスや企業が集中しているため、パソコンを使ったデータ入力や、封入・発送などの事務代行業務が中心になります。また、デザインやWeb制作など、クリエイティブ系の業務を行う事業所も増えており、就労移行支援事業所と連携してスキルアップを支援するケースも見られます。このように、都市部では企業と連携した就労訓練や在宅にもつながる仕事が多いのが特徴です。
地方の特色:地域資源を活かした製造・農業系業務

一方、郊外や地方では、その土地の自然や地域資源を活かした仕事が中心です。
たとえば、農業と福祉を組み合わせた「農福連携」に取り組む事業所では、野菜の栽培・収穫・袋詰めなどの農作業が行われています。また、地元の食品工場や製造業と連携し、パンやお菓子、特産品の加工、部品の組み立て・検品といった軽作業を提供する事業所も多く見られます。
地域の産業と事業所の作業内容は密接に関係しています。自分の得意な作業や働きたい分野に合わせて、地域ごとの特色を知っておくことで、より自分に合った職場を見つけやすくなるでしょう。
在宅就労という新しい選択

近年では、A型・B型事業所の一部で在宅就労(テレワーク)を取り入れる動きが広がっています。体調や天候、交通手段などの影響を受けにくく、自分のペースで働きやすいのが大きなメリットです。通所が難しい方にとって、在宅就労は新しい働き方の選択肢になっています。
在宅で行われる主な作業には、パソコンを使ったデータ入力やデザイン、ライティングなどの事務系業務があります。オンラインで職員や仲間とつながりながら進める仕組みを整えている事業所も増えています。
ただし、製造や清掃など現場作業が中心の仕事は、機械や設備を扱う必要があるため、通所による作業が基本となります。自分の得意分野や体調、生活スタイルに合わせて、在宅・通所それぞれの働き方を上手に組み合わせることが大切です。
■関連リンク
自分に合った地域での働き方を見つけるコツ

自分に合った地域での働き方を見つけるためには、作業内容・支援体制・通所のしやすさをしっかり確認することが大切です。「どんな作業なら無理なく続けられそうか」「職員との関わり方は自分に合っているか」など、実際の様子を見学や体験利用で確かめてみましょう。
また、通所が難しい場合や自宅で集中して作業したい場合には、在宅就労を取り入れている事業所を選ぶのも一つの方法です。地域にこだわらず、自分の体調や生活リズムに合わせて働ける点が魅力です。
地域の特色や自分の得意分野を意識しながら、「続けやすい働き方」を見つけることが、長く安心して働くための第一歩となります。
まとめ

就労継続支援A型・B型は、障がいや病気があっても「自分らしいペースで働く力」を育てるための制度です。A型は雇用契約を結び、一般企業に近い環境で働くステップを踏める場。B型は体調や生活リズムに合わせながら、作業を通じて働くリズムを整える場として、それぞれに役割があります。
どちらが自分に向いているかを判断するには、
- 体調や通院状況など、働ける時間やペース
- 人との関わり方や支援の手厚さ
- 将来どんな働き方を目指したいか
を整理してみることが大切です。
最近では、在宅ワークを取り入れるA型・B型事業所も増えています。外出が難しい方でも、安心して社会とつながる方法が広がっています。
「一般就労」だけがゴールではありません。自分の力を発揮できる環境で、あせらず働き方を築いていくことが、長く安心して働くための第一歩です。
就労継続支援A型・B型の制度を上手に活用しながら、自分に合った“働き方の形”を見つけていきましょう。
第2章参考条文
① 福祉サービスの根拠(就A,就B)
障害者総合支援法第5条 この法律において「障害福祉サービス」とは、居宅介護、重度訪問介護、同行援護、行動援護、療養介護、生活介護、短期入所、重度障害者等包括支援、施設入所支援、自立訓練、就労選択支援、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助及び共同生活援助をいい、「障害福祉サービス事業」とは、障害福祉サービス(障害者支援施設、独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園法(平成十四年法律第百六十七号)第十一条第一号の規定により独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園が設置する施設(以下「のぞみの園」という。)その他主務省令で定める施設において行われる施設障害福祉サービス(施設入所支援及び主務省令で定める障害福祉サービスをいう。以下同じ。)を除く。)を行う事業をいう。
障害者総合支援法施行規則第6条の十 法第五条第十五項に規定する主務省令で定める便宜は、次の各号に掲げる区分に応じ、当該各号に定める便宜とする。
一 就労継続支援A型 通常の事業所に雇用されることが困難な障害者であって雇用契約に基づく就労が可能であるもの又は通常の事業所に雇用されている障害者であって前条に規定する事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものに対して行う雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
二 就労継続支援B型 通常の事業所に雇用されることが困難であって雇用契約に基づく就労が困難であるもの又は通常の事業所に雇用されている障害者であって前条に規定する事由により当該事業所での就労に必要な知識及び能力の向上のための支援を一時的に必要とするものに対して行う就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練その他の必要な支援
② 障害者に対する差別の禁止・合理的配慮(就A)
障害者雇用促進法第34条 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者に対して、障害者でない者と均等な機会を与えなければならない。
第35条 事業主は、賃金の決定、教育訓練の実施、福利厚生施設の利用その他の待遇について、労働者が障害者であることを理由として、障害者でない者と不当な差別的取扱いをしてはならない。
第36条の二 事業主は、労働者の募集及び採用について、障害者と障害者でない者との均等な機会の確保の支障となつている事情を改善するため、労働者の募集及び採用に当たり障害者からの申出により当該障害者の障害の特性に配慮した必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。
第36条の三 事業主は、障害者である労働者について、障害者でない労働者との均等な待遇の確保又は障害者である労働者の有する能力の有効な発揮の支障となつている事情を改善するため、その雇用する障害者である労働者の障害の特性に配慮した職務の円滑な遂行に必要な施設の整備、援助を行う者の配置その他の必要な措置を講じなければならない。ただし、事業主に対して過重な負担を及ぼすこととなるときは、この限りでない。
第36条の四 事業主は、前二条に規定する措置を講ずるに当たつては、障害者の意向を十分に尊重しなければならない。
③ 労働者の安全、ケガや病気の防止(就A)
労働安全衛生法3条 事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。
④ セクハラ防止(就A)
男女雇用機会均等法11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
⑤ パワーハラスメント防止(就A)
労働施策総合推進法30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であつて、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
⑥ 最低賃金の保証(就A)
労働基準法28条 賃金の最低基準に関しては、最低賃金法(昭和三十四年法律第百三十七号)の定めるところによる。
最低賃金法4条 使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。
⑦ 障害者虐待防止











コメントを残す