この記事では、障がいのある方がご自身の能力や希望に合った仕事を見つけ、安心して長く働き続けるための羅針盤となる「就労支援」について、その全体像から具体的なステップまでを網羅的に解説します。
漠然とした「働きたい」という思いを、実現可能なキャリアプランへと変えるために。この記事を最後まで読むことで、以下の点が明確になります。
- なぜ今、就労支援が重要なのか、その社会的背景とあなた自身にもたらすメリット
- 「就労移行支援」や「就労継続支援」など、数あるサービスの中から自分に合ったものを見つけるための違いと特徴
- 相談から就職、そして最も大切な「職場定着」までの具体的な支援の流れとステップ
- サービスの利用条件や手続きの方法など、一歩を踏み出すための具体的な疑問への答え
この記事は、障害や体調と向き合いながら、自分らしい働き方を見つけ、社会で活躍したいと願う、以下のような方々に向けて執筆しています。
- 一般企業での就職を目指しているが、何から始めればいいか分からず不安な方
- 就労支援に興味はあるが、自分に合うサービスがどれなのか知りたい方
- 一度は就職したものの、長く続けることに難しさを感じ、再挑戦を考えている方
この記事が、就労支援という頼れるパートナーを見つけ、あなたらしいキャリアを築くための確かな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
Contents
障害者の就労支援の重要性

障害者雇用の現状と課題
障害者雇用促進法のもと、民間企業における障害者の雇用数は年々増加しており、法定雇用率を達成する企業の割合も向上しています。社会全体で障害者雇用への意識が高まっていることは、大きな進展といえるでしょう。
しかし、その一方で、雇用数だけでは測れない課題も依然として存在します。
- 職場定着の問題 職場環境や人間関係への不適応、業務内容とのミスマッチなどから、早期に離職してしまうケースが少なくありません。特に就職後1年以内の定着率が課題となっています。
- 雇用の質の課題 任される業務が補助的・定型的な作業に限定され、本人の能力やキャリアアップへの意欲が十分に活かされないことがあります。
- 賃金水準 障害のない労働者と比較して、平均賃金が低い傾向にあります。これは、職務内容や労働時間が限定されることなどが要因と考えられます。
- 障害特性への理解 特に精神障害や発達障害のある方に対しては、周囲の理解や合理的配慮がまだ十分に進んでいない職場も見受けられます。
これらの課題を解決し、障害のある方が安心して能力を発揮できる社会を実現するためには、企業側の努力に加え、本人と企業を繋ぎ、継続的に支える就労支援の役割が極めて重要になります。
就労支援がもたらす社会的意義
障害者就労支援は、前述したような課題の解決を目指すだけでなく、障害のある方本人、企業、そして社会全体に多くのプラスの効果をもたらします。その意義は多岐にわたります。
- 障害のある方本人にとっての意義 就労を通じて経済的な基盤を築くことは、生活の安定に直結します。また、自身の能力を発揮し、社会の一員として役割を担うことは、自己肯定感を高め、生きがいや社会参加への意欲を育むことに繋がります。
- 企業にとっての意義 障害のある方を雇用することは、労働力不足の解消に貢献するだけでなく、多様な人材が活躍できる職場環境の構築を促します。新たな視点や価値観が組織にもたらされることで、業務改善やイノベーションが生まれることも少なくありません。これは、企業の社会的責任(CSR)を果たす上でも重要な取り組みです。
- 社会全体にとっての意義 障害のある方が就労し、納税者となることは、社会保障制度を支える側へと回ることを意味し、社会全体の活力を高めます。何よりも、誰もがその能力や個性に応じて活躍できるインクルーシブな社会の実現に向けた、大きな一歩になるといえるでしょう。
このように、就労支援は個人を支える福祉的な側面に加え、経済を活性化させ、より成熟した共生社会を築くための重要な基盤としての役割を担っています。
就労支援の種類と特徴

①就労移行支援
就労移行支援は、障害のある方が一般企業へ就職し、安定して働き続けるために必要なスキルや知識の習得をサポートする福祉サービスです。「一般企業への就職」を明確なゴールとしている点が大きな特徴で、そのための準備から就職活動、そして就職後の定着までを一貫して支援します。
具体的な支援内容は多岐にわたりますが、主に以下のようなプログラムが提供されます。
- 個別支援計画の作成: 一人ひとりの希望や適性、課題に合わせて、目標達成までの具体的なプランを一緒に考えます。
- 職業訓練: PCスキル、ビジネスマナー、コミュニケーション能力など、働く上で求められる実践的なスキルの向上を目指します。
- 就職活動のサポート: 自己分析を通じて自分の強みを理解し、履歴書の作成や面接の練習など、就職活動の各ステップを丁寧に支援します。
- 職場探しと職場実習: 本人の希望や適性に合った求人情報を探したり、実際に企業で働く体験(職場実習)を通じて、仕事や職場への理解を深めたりします。
- 就職後の定着支援: 就職はゴールではなくスタートです。就職後に生じる仕事上の悩みや人間関係の課題について相談に応じ、長く安心して働き続けられるように本人と企業の双方をサポートします。
原則として2年間という利用期間の中で、個々のペースに合わせたきめ細やかな支援を受けられるため、自信を持って就職に臨むことができます。
②就労継続支援
就労継続支援は、一般企業等での就労が難しい方が、支援を受けながら働くことができるサービスです。
事業所と雇用契約を結んで給料を得る「A型」と、雇用契約を結ばずに生産活動の対価として工賃を得る「B型」という違いがあります。
就労継続支援A型とB型のサービス内容の違いについては、今後の記事にて掘り下げて詳しく解説いたします。

支援の流れとステップ
就労支援、特に就労移行支援におけるプロセスは、利用者一人ひとりの希望や状況に合わせて柔軟に進められますが、一般的には以下のようなステップで進んでいきます。支援機関は、各段階で丁寧に寄り添いながら、就職という共通の目標に向かって伴走します。
Step 1: 相談・アセスメント まず、支援機関の担当者との面談から始まります。これまでの経験や就労に関する希望、不安に感じていることなどを共有し、本人の強みや課題を整理します(アセスメント)。この内容をもとに、どのような支援が最適かを一緒に考えます。
Step 2: 個別支援計画の作成 アセスメントの結果を踏まえ、就職に向けた具体的な目標と、それを達成するための計画を立てます。
- どのような職種を目指すか
- そのために必要なスキルは何か
- どのようなペースで訓練を進めるか といった点を明確にし、本人、支援員が共通の認識を持って支援を進めるための指針となります。
Step 3: 職業訓練・準備 個別支援計画に沿って、就労に必要な知識やスキルの習得を目指します。
- 基礎訓練: ビジネスマナー、PCスキル、コミュニケーションスキルの向上など
- 自己理解: 自分の障害特性や得意・不得意を理解し、対処法を学ぶ
- 体力・生活リズムの安定: 定期的な通所を通じて、働くための基礎的な体力をつけ、生活リズムを整える
Step 4: 就職活動 訓練で自信をつけた段階で、具体的な就職活動を開始します。
- 求人情報の収集、企業研究
- 応募書類(履歴書、職務経歴書)の作成支援
- 模擬面接などの面接対策 支援員が企業の採用担当者と連携し、本人の特性や希望に合った職場探しをサポートします。
Step 5: 職場定着支援 就職はゴールではなく、新たなスタートです。働き始めた後に生じる悩みや課題に対して、定期的な面談などを通じてサポートを行います。本人と企業の間に立ち、双方が円滑な関係を築き、長く安心して働き続けられる環境を整えるための重要な支援です。
職場実習の重要性
職場実習は、就労支援のプロセスにおいて、訓練で得た知識やスキルを実践の場で試すための重要なステップです。実際の企業で一定期間働くこの体験は、求人情報や面接だけでは得られない多くの情報をもたらし、利用者と企業の双方にとって大きな意義を持ちます。
職場実習が重要とされる理由は、主に以下の点にあります。
- 利用者にとっての重要性
- 仕事・職場への理解: 実際の業務内容や職場の雰囲気を肌で感じることで、自分に合っているかどうかを具体的に判断できます。
- 自己理解の深化: 実務を通して、自分の得意なことや苦手なこと、必要な配慮などを客観的に把握し、自己分析を深める機会となります。
- スキルの確認と自信の獲得: 訓練で学んだスキルが実務で通用するかを確認し、「働けた」という成功体験を通じて就職への自信を高めます。
- 就職後のミスマッチ防止: 事前に働く環境を体験することで、就職後に「思っていたのと違った」と感じるミスマッチを防ぎ、職場定着に繋がります。
- 企業にとっての重要性
- 能力・人柄の把握: 書類選考や面接だけでは分かりにくい、実習生の実際の仕事ぶりや人柄、他の従業員との相性を確認できます。
- 障害特性への理解: 共に働く中で、実習生に必要な配慮や効果的なコミュニケーション方法を具体的に学ぶことができます。
- 受け入れ体制の準備: 実習を通じて、どのような業務を任せられるか、どのようなサポート体制が必要かなどを事前に検討し、受け入れ準備を整えることが可能です。
このように、職場実習は利用者と企業がお互いを理解し、就職後の安定した関係を築くための「架け橋」として、非常に重要な役割を担っています。
障害者の就労に向けた支援サービス

職業訓練とスキルアップ
就労支援サービスでは、働くために必要なスキルを身につけ、自信を持って就職活動に臨むための職業訓練プログラムが提供されます。これは、利用者一人ひとりの希望や適性、これまでの経験を考慮して計画され、就職後の活躍を見据えたスキルアップを目指すものです。
提供される訓練内容は支援機関によって多様ですが、一般的には以下のようなスキルを習得することができます。
- 基本的なビジネススキル PCスキル(Word、Excelなど)、ビジネスマナー(挨拶、電話応対、メール作成)、ビジネス文書の作成方法といった、社会人としての基礎を学びます。
- コミュニケーションスキル 職場での円滑な人間関係に欠かせない「報告・連絡・相談」の実践練習や、グループワークを通じて、他者と協力して作業を進める訓練を行います。
- 自己理解とセルフケア 自身の障害特性や得意・不得意を理解し、周囲にどのように伝えれば良いかを学びます。また、ストレスへの対処法や体調管理の方法など、安定して働き続けるためのスキルも身につけます。
- 専門的なスキル 事業所によっては、Webデザインやプログラミング、簿記、軽作業(ピッキング、検品)など、より専門的な職種に直結する訓練を提供している場合もあります。
これらの訓練を通じて「できること」を増やしていくプロセスは、応募できる求人の幅を広げるだけでなく、就職への自信を高め、就職後の職場定着にも繋がる重要なステップとなります。
メンタルヘルス支援
障害のある方が就労し、その職場で長く働き続けるためには、業務スキルを習得することと同じくらい、心の健康を維持することが重要になります。新しい環境への適応や職場での人間関係は、誰にとってもストレスの原因となり得ますが、障害特性によっては特に大きな負担となる場合があるためです。
就労支援におけるメンタルヘルス支援は、こうした心理的な負担を軽減し、安定した職業生活を送るための土台を築くことを目的としています。
- 定期的な面談と相談体制 支援員との定期的な面談を通じて、仕事の悩みや生活上の不安などを気軽に相談できる環境が整えられています。問題を一人で抱え込まずに早期に共有することで、深刻化する前に対処することが可能になります。
- ストレス対処法の習得 ストレスの原因や自身の感情の動きを理解し、自分に合った対処法(ストレスコーピング)を見つけるためのプログラムが提供されます。リラックスする方法や物事の捉え方を変える練習などを通じて、ストレスと上手に付き合う力を養います。
- 自己理解の深化とセルフケア どのような状況でストレスを感じやすいのか、自分の思考や感情のパターンはどうか、といった自己理解を深める支援が行われます。自分自身を客観的に知ることで、不調のサインに早めに気づき、セルフケアを行うことができるようになります。
これらの支援は、就職活動の時期だけでなく、就職後の定着支援の段階においても継続されます。職業スキルと心の安定は、いわば車の両輪のようなものです。メンタルヘルス支援は、問題が起きてから対処するのではなく、予防的な観点から心の状態を安定させ、利用者が自信を持って働き続けられるための重要な基盤となります。
就労支援に関するよくある質問

利用条件と手続きは?
就労支援サービスを利用するためには、一定の条件を満たし、所定の手続きを踏む必要があります。ここでは、就労移行支援などを例に、一般的な利用条件と手続きの流れについて説明します。
利用条件
サービスの対象となるのは、主に以下のような方々です。
- 対象者: 身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)、または指定難病のある方
- 年齢: 原則として18歳以上65歳未満の方
- 意向: 一般企業などへの就労を希望し、就労が可能と見込まれる方
障害者手帳をお持ちでなくても、医師の診断書や自治体の判断によってサービスの利用が認められる場合があります。利用を希望するサービスの内容とご自身の状況が合っているかが、まず大切なポイントになります。
手続きの流れ
利用開始までの手続きは、お住まいの自治体によって多少異なる場合がありますが、一般的には以下のステップで進みます。
- 相談 お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や、相談支援事業所などに、就労支援サービスの利用について相談します。
- 事業所の見学・体験 利用を検討している就労支援事業所を見学したり、体験利用をしたりして、ご自身に合った支援内容や雰囲気であるかを確認します。
- 利用申請 利用したい事業所が決まったら、市区町村の窓口でサービスの利用申請を行います。
- サービス等利用計画案の作成 相談支援事業所の相談支援専門員が、ご本人の希望や目標をヒアリングし、どのようなサービスをどのくらい利用するかをまとめた「サービス等利用計画案」を作成します。
- 支給決定と受給者証の交付 提出された申請書類や計画案をもとに、市区町村がサービスの支給を決定します。決定後、「障害福祉サービス受給者証」が交付されます。
- 契約・利用開始 受給者証を持って事業所に行き、サービス利用に関する契約を結びます。契約後、個別支援計画を作成し、正式に利用開始となります。
手続きには一定の時間がかかるため、利用を考え始めたら、まずは地域の相談窓口に問い合わせてみることがスムーズな第一歩となります。
支援内容の具体例は?
就労支援サービスで提供される内容は、画一的なものではなく、利用者一人ひとりの希望や障害特性、スキル、課題に応じて個別に計画されます。ここでは、多くの方に共通するニーズに対して、どのような支援が行われるのか、その具体例をいくつか紹介します。
実際の支援は、これらを組み合わせたり、より専門的なプログラムを取り入れたりしながら、個別の支援計画に基づいて進められます。
| 想定される課題・ニーズ | 支援内容の具体例 |
|---|---|
| コミュニケーションへの苦手意識 | ・グループワークを通じて、他者と協力して作業を進める訓練・職場での「報告・連絡・相談」を想定したロールプレイング ・自分の意見や要望を適切に相手に伝える練習(アサーション・トレーニング) |
| PCスキルに自信がない、または未経験 | ・PCの基本操作やタイピング練習からスタート・Wordでのビジネス文書作成、Excelでのデータ入力や表計算、PowerPointでの資料作成など、実務に即したスキル習得 ・MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)などの資格取得に向けた学習支援 |
| 生活リズムが不規則で、毎日通えるか不安 | ・まずは週2~3日、短時間の通所から始め、徐々に日数や時間を延ばしていく・自身の体調を管理し、安定させるための方法(セルフケア)を学ぶプログラムへの参加 ・規則正しい生活習慣を身につけるための個別相談 |
| 自分にどんな仕事が向いているか分からない | ・職業興味検査や能力評価などのアセスメントを実施・支援員との面談を通じた自己分析(得意なこと、苦手なこと、大切にしたい価値観などの整理) ・様々な業種の企業での職場実習を体験し、仕事への理解と自己理解を深める |
| 応募書類の作成や面接が苦手 | ・自身の強みや経験を効果的にアピールできる履歴書・職務経歴書の作成サポート・模擬面接を繰り返し行い、質問への受け答えや立ち居振る舞いを練習 ・面接への支援員同行(必要に応じて) |
| 就職後の人間関係や業務への不安 | ・ストレスの原因を理解し、自分に合った対処法を身につける訓練・就職後、定期的に支援員が職場を訪問したり、面談を行ったりする定着支援 ・本人と企業の間に立ち、業務内容や職場環境の調整をサポート |
まとめ

この記事では、障害のある方がご自身の能力や希望に合った仕事を見つけ、安心して長く働き続けるための「就労支援」について、その重要性、サービスの種類(就労移行支援、就労継続支援A型・B型)、具体的な支援プロセス(相談から職場定着まで)、そして職業訓練やメンタルヘルス支援といったサポート内容までを網羅的に解説しました。
障害者雇用を取り巻く環境は、法整備や社会の意識の変化と共に、確実に前進しています。
障害や体調と向き合いながら「働きたい」と願うとき、多くの不安や疑問に直面するかもしれません。しかし、就労支援は、そうした悩みや課題を一人で抱え込まず、専門的な知識を持つ支援員と二人三脚で乗り越えていくための頼れるパートナーです。
大切なのは、ご自身の状況や希望に合ったサービスを見つけることです。この記事で得た知識が、あなたらしいキャリアを築くための確かな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。
まずは「相談する」という小さなステップから、始めてみてはいかがでしょうか。
就労継続支援B型カチカでは、障害を持つ方が自分のペースで短時間から始められる作業や特性を最大限に活かせるクリエイティブな仕事を通じて、「自分に合った持続可能な働き方」 を見つけるお手伝いをいたします。
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