この記事では、障がいのある方が資格取得を通じて「自信」と「市場価値」を手に入れ、就職や転職活動を有利に進めるための具体的なロードマップを網羅的に解説します。 「自分にできるか不安」「何から始めればいいかわからない」という迷いを、確かな一歩へと変えるために。この記事を最後まで読むことで、以下の点が明確になります。
- 障害者雇用・一般枠において、資格がどのように「即戦力の証明」や「意欲のアピール」につながるのか
- 医療・福祉系からIT・事務系まで、障害特性に合わせて働きやすい「おすすめ資格」の具体的ラインナップ
- 独学、通信、通学など、自分の体調やペースに合わせた無理のない学習スタイルの選び方
- 受験料やスクール代の負担を軽くするために知っておくべき、国の助成金や支援制度の活用法
この記事は、障がいや体調と向き合いながら、スキルを武器に社会で自立したいと願う、以下のような方々に向けて執筆しています。
- 実務経験が少なく、就職活動でのアピール材料に悩んでいる方
- 今の職場や働き方に不安があり、専門スキルを身につけて転職やキャリアアップを目指したい方
- 病気や療養によるブランク(空白期間)を、前向きな「準備期間」として説明できるようになりたい方
- いきなり就職するのは不安だが、就労継続支援B型などを活用して少しずつスキルを磨いていきたいと考えている方
この記事が、資格という「パスポート」を手にし、あなたらしいキャリアを切り拓くための確かな道しるべとなれば幸いです。
Contents
障がい者が資格を取得する意義

就職・転職におけるメリット
障がいのある方が就職や転職活動を行う際、資格の取得は単なる知識の習得以上に大きな意味を持ちます。自身の障害特性や配慮事項を伝えることと並行して、「企業に対してどのような貢献ができるか」を明確に示す必要があるからです。
資格を取得することで得られる具体的なメリットには、主に以下のような点が挙げられます。
- 客観的なスキルの証明 実務経験が少ない場合や未経験の職種に挑戦する場合でも、資格は一定水準の知識や技術を持っていることの客観的な証明となります。採用担当者に対して、即戦力としての可能性や基礎能力の高さを具体的にアピールしやすくなります。
- 職業選択の幅が広がる 事務職、IT関連、専門職など、特定の資格が応募条件となっている求人は少なくありません。資格を持つことで応募可能な求人数が増え、より自分に合った働き方や職場環境を選べる可能性が高まります。
- 学習意欲と継続力のアピール 資格取得には計画的な学習と継続的な努力が必要です。目標に向かって努力できる姿勢や、新しいことを学ぶ意欲があることを示す材料となり、人物面での評価向上にもつながります。
特に、障害者雇用枠での採用を目指す場合だけでなく、一般枠での就労を検討する場合においても、資格は自身の専門性を裏付ける強力な武器となります。また、資格手当などによる給与面での優遇が期待できるケースもあり、経済的な安定やキャリアアップを目指す上でも重要な要素といえます。
自己成長とスキルアップの重要性
資格取得のプロセスは、就職や転職といった対外的な成果だけでなく、自身の内面や能力における「自己成長」という観点でも非常に大きな意味を持ちます。障がいのある方が社会で長く安定して働き続けるためには、スキルアップを通じた自信の回復や、実務能力の底上げが欠かせない要素となるからです。
具体的な重要性として、以下のような側面が挙げられます。
- 自己肯定感と自信の回復 障がいの受容過程や過去の経験から、自分に自信を持てなくなっている方も少なくありません。しかし、資格取得という明確な目標を立て、学習を積み重ねて合格を勝ち取るプロセスは、「自分にもできる」という確かな成功体験(自己効力感)をもたらします。この自信は、仕事に向き合う前向きな姿勢の土台となります。
- 業務遂行能力の向上と不安の軽減 体系的に学んだ知識やスキルは、実際の業務において大きな支えとなります。「何をしていいかわからない」という不安が減り、根拠を持って業務に取り組めるようになるため、精神的な負担を軽減しながらパフォーマンスを発揮しやすくなります。
- 変化に対応する力の養成 技術の進歩や社会情勢の変化に伴い、求められるスキルも日々変化しています。資格取得を通じて「学ぶ習慣」を身につけておくことは、新しい環境や業務内容に適応するための基礎体力となります。常にスキルアップを目指す姿勢は、長期的なキャリア形成において自身の可能性を広げる鍵となるでしょう。
このように、資格取得は単なる就職のための手段にとどまらず、自分自身の可能性を再発見し、自立した職業人生を歩むための重要なステップとなります。
障がい者におすすめの資格一覧


(タップして拡大)
医療・福祉系資格
医療や福祉の分野は、社会的な需要が非常に高く、資格を取得することで安定した就職につながりやすいのが特徴です。また、ご自身の通院経験やサービス利用の経験から「困っている人の力になりたい」というモチベーションを持ちやすく、当事者の視点を業務に活かせる場面も少なくありません。
ここでは、比較的挑戦しやすく、障がいのある方にも人気の高い資格をいくつかご紹介します。
- 医療事務 病院やクリニックでの受付、会計、レセプト(診療報酬明細書)作成などを行う仕事です。デスクワークが中心となるため、身体的な負担が比較的少なく、体力に自信がない方や車椅子を利用されている方でも働きやすい職種といえます。通信講座でも学びやすく、取得へのハードルが比較的低いのも魅力です。
- 調剤薬局事務 調剤薬局において、薬剤師のサポートや受付、会計業務を担当します。医療事務に比べて学習範囲が限定的であるため、短期間での取得を目指しやすい資格です。正確な事務処理能力が求められますが、ルーチンワークが得意な方には適性があります。
- 介護職員初任者研修(旧ホームヘルパー2級) 介護職の入門となる資格です。食事や入浴の介助など、身体介護を行うための基礎知識と技術を学びます。身体を動かす仕事であるため一定の体力は必要ですが、人とのコミュニケーションが好きで、直接感謝される仕事に就きたい方におすすめです。
- 登録販売者 ドラッグストアや薬局などで、一般用医薬品(第2類・第3類)の販売ができる国家資格です。薬剤師に次ぐ薬の専門家としてニーズが高く、資格手当がつくことも多いため、収入アップや専門性を高めたい方に適しています。
医療・福祉系資格と一口に言っても、デスクワークが中心のものから、現場での対人援助がメインとなるものまで様々です。ご自身の障害特性や体調、得意な作業スタイル(事務処理か、対人コミュニケーションか)に合わせて選ぶことが大切です。
IT・事務系資格
デスクワークが中心となるIT・事務系の職種は、身体的な負担を抑えやすく、環境調整を行えば自分のペースで業務に取り組みやすいため、多くの障害者の方にとって有力な選択肢となります。また、PCスキルを客観的に証明できる資格を持っていれば、一般事務だけでなく、在宅ワークやテレワークといった柔軟な働き方を目指す上でも有利に働きます。
事務職やITサポート業務において汎用性が高く、就職活動でのアピールに直結しやすい主な資格は以下の通りです。
- MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト) Word、Excel、PowerPointといったオフィスソフトの利用スキルを証明する国際資格です。ほとんどの企業で使用されているソフトであるため、事務職を目指す上での「即戦力」として評価されやすく、実務に即した操作能力を具体的に示すことができます。パソコン操作の基礎固めとしても最適です。
- 日商簿記検定(3級・2級) 企業の経理事務や会計処理に必要な知識を問う資格です。数字を扱う業務が得意な方や、ルールに基づいて細かい作業を正確に進めることが得意な方(几帳面さや高い集中力を持つ方など)に適性があります。特に3級以上を取得していると、経理補助や総務などの専門的な事務職への応募が可能になり、キャリアの選択肢が広がります。
- ITパスポート ITに関する基礎的な知識を証明する国家資格です。技術的な内容だけでなく、セキュリティや企業コンプライアンス、経営に関する基礎知識も範囲に含まれます。どのような職種についてもITリテラシーが求められる現代において、情報機器に対する基礎理解があることを示す信頼性の高い材料となります。
これらの資格は、学習教材が豊富で独学や通信教育でも取り組みやすいのが特徴です。IT・事務系の業務は、対人コミュニケーションの頻度が比較的少なく、パソコンに向かって正確に成果物を作成することが重視される傾向にあります。そのため、対人関係に不安がある方や、静かな環境で集中力を活かして働きたい方にとっても相性の良い分野といえるでしょう。
技術・専門職資格
特定の分野における専門的な技術や知識を証明する資格は、その人にしかできない仕事を生み出し、職場での代替不可能な立ち位置を確立する助けとなります。ものづくりへの関心が高い方、手先の器用さを活かしたい方、あるいは特定の作業に対して高い集中力を発揮できる方にとって、こうした専門職資格は大きな武器になります。
また、専門スキルを持っていれば、フリーランスや在宅ワークなど、組織に属さない働き方の選択肢も広がりやすくなります。ここでは、障がいのある方の特性を強みとして活かしやすい技術・専門系の資格をご紹介します。
- Webクリエイター能力認定試験 / Photoshop・Illustratorクリエイター能力認定試験 Webサイトのデザインやコーディング、画像編集ソフトの操作スキルを証明する資格です。デザインやものづくりが好きな方に適しており、聴覚障害があり電話対応が難しい方や、在宅での就労を希望する方にも人気があります。成果物が目に見える形で残るため、やりがいを感じやすいのも特徴です。
- CAD利用技術者試験 建築や機械の設計図面をパソコンで作図する「CAD(キャド)」のスキルを測る資格です。図面を正確に読み取り作成する緻密さが求められるため、細かい作業への集中力が高い方や、空間認識能力に長けた方に適性があります。製造業や建設業界の技術職・事務職として安定した需要があります。
- ビルクリーニング技能士 ビルの清掃作業に関する知識と技能を証明する国家資格です。清掃業務は手順が決まっていることが多く、ルーチンワークを得意とする方や、身体を動かして働きたい方に適しています。資格を取得することで、単なる清掃スタッフから、現場のリーダーや指導的立場へのキャリアアップを目指すことが可能になります。
- ファイナンシャル・プランニング技能士(FP) 税金、保険、年金などの金融知識を扱う専門資格です。数字や制度への理解が深く、論理的な思考が得意な方に向いています。金融・保険業界への就職だけでなく、自身の生活設計を立てる上でも役立つ実用的な知識が得られるため、将来への不安解消にもつながります。
技術・専門職資格の取得には、ある程度の学習時間や実技の習得が必要になりますが、一度身につけた技術は一生モノの財産となります。「好き」や「得意」を仕事にするためのパスポートとして、興味のある分野に挑戦してみてはいかがでしょうか。
資格取得のための学習方法

独学と通信教育の選択肢
資格取得を目指す際、スクールに通う時間や体力の確保が難しい場合や、自分のペースでじっくり学びたい方にとって、自宅で学習できる「独学」と「通信教育」は非常に有力な選択肢となります。それぞれの学習スタイルには特徴があり、ご自身の性格や生活リズム、目指す資格の難易度に合わせて選ぶことが大切です。
1. 独学:マイペースに費用を抑えて学ぶ 市販のテキストや過去問題集などを自分で購入し、学習計画を立てて進める方法です。
- メリット スクールや通信講座に比べて費用を大幅に抑えることができます。また、体調に合わせて「今日は10分だけ」「調子が良いから2時間」といったように、柔軟にスケジュールを調整できるのが最大の魅力です。
- デメリット 疑問点があっても質問できる相手がいないため、解決に時間がかかることがあります。また、学習のペースメーカーが自分自身になるため、モチベーションの維持やスケジュール管理に工夫が必要です。
- こんな人におすすめ 費用をかけずに挑戦したい方、既に基礎知識がある方、自己管理が得意でコツコツ進められる方に向いています。
2. 通信教育:体系的なカリキュラムとサポートを活用 教育事業者が提供する教材セットや動画講義を利用して学ぶ方法です。自宅学習でありながら、プロの指導ノウハウを活用できます。
- メリット 試験の傾向を分析したテキストや動画教材が用意されており、効率よく合格に必要な知識を身につけられます。多くの講座では、メールやチャットでの質問対応、課題の添削などのサポート体制が整っており、独学での「わからない」という不安を解消しやすいのが特徴です。
- デメリット 独学に比べると数万円〜の受講料がかかります。また、標準学習期間が設定されていることが多いため、ある程度そのペースに合わせて進める意識が必要です。
- こんな人におすすめ 初めてその分野を学ぶ方、効率的に短期間での合格を目指したい方、一人で勉強を続けることに不安がある方に向いています。
どちらが良い・悪いではなく、ご自身の障害特性(集中力が続きやすい時間帯、テキストを読むのが得意か動画が見やすいかなど)や、経済状況を考慮して、無理なく続けられる方法を選択しましょう。まずは独学で始めてみて、難しさを感じたら通信教育に切り替えるという柔軟な考え方も一つの手です。
通学型の専門学校のメリット
自宅学習が中心となる独学や通信教育に対し、決まった時間に学校へ通い、対面で授業を受けるのが通学型の専門学校です。費用や移動の負担はかかりますが、その分、学習効率や就職支援の面で強力なバックアップが得られるのが大きな特徴です。特に、実践的なスキルの習得や、社会に出るための準備期間として環境を整えたい方にとって、通学型には多くのメリットがあります。
主なメリットとして、具体的に以下の点が挙げられます。
- プロによる直接指導と疑問の即時解決 講師から直接指導を受けられるため、わからない部分をその場で質問して解決できます。特に、介護、医療、デザイン、工学といった実技や実習を伴う分野では、実際に手を動かしながら細かなフィードバックを受けられる点が独学にはない大きな強みです。
- 就労を見据えた生活リズムの確立 「決まった時間に起きて、身支度をして移動し、授業を受ける」というサイクルは、実際の通勤や勤務のリズムとよく似ています。資格の勉強と並行して、毎日の通学をこなすことで体力作りや規則正しい生活習慣の定着を図れるため、就職後の生活をシミュレーションする「予行演習」としても機能します。
- 学習に集中できる環境と仲間の存在 自宅では気が散ってしまい集中できないという方でも、教室という「学ぶための場所」に身を置くことで気持ちを切り替えやすくなります。また、同じ目標を持つクラスメイトの存在は、学習へのモチベーション維持や、孤独感の解消に役立ち、対人コミュニケーションの練習の場にもなります。
- 手厚い就職サポート 多くの専門学校は業界との強固なパイプを持っており、学校独自の求人情報の提供や、キャリアセンターによる履歴書添削・面接対策などが受けられます。障がいのある学生への支援実績がある学校やコースであれば、障害者雇用枠の紹介や、自身の障害特性に合わせた就職活動のアドバイスも期待できます。
通学型の学習は、単に資格を取得するだけでなく、社会参加へのステップアップとしての役割も果たします。学費や通学の可否を十分に検討する必要はありますが、確実なスキル習得と手厚いサポート、そして「通える自信」を身につけたい方には最適な選択肢といえるでしょう。
資格取得にかかる費用と補助制度


(タップして拡大)
受験料や教材費の相場
資格取得を目指す際、学習時間や努力だけでなく、現実的に考えておかなければならないのが「費用」の問題です。どのような方法で学ぶか、どの資格を目指すかによって金額は大きく異なりますが、あらかじめ相場を知っておくことで、無理のない資金計画を立てることができます。
費用は大きく分けて、試験を受けるために必ずかかる「受験料」と、学習スタイルによって変動する「学習費用(教材費・受講料)」の2つがあります。
1. 受験料の相場 試験の主催団体へ支払う費用です。 国家資格や公的資格は比較的安価な傾向にありますが、民間資格やベンダー資格(特定の企業が主催するIT系資格など)は高額になるケースもあります。一般的には、1回あたり数千円~1万円台が目安ですが、高難易度の専門資格では2万円を超えることもあります。
2. 学習費用の相場(教材費・スクール代) ここが最も金額差が出る部分です。
- 独学の場合 市販のテキストと問題集を数冊揃える程度で済むため、数千円~1万5千円ほどに抑えることができます。最も経済的な方法です。
- 通信講座の場合 教材一式、動画講義、質問サポートなどがセットになっており、3万円~6万円程度が相場です。医療事務や簿記などはこの価格帯の講座が多く見られます。
- 通学スクールの場合 講師による直接指導や設備利用費が含まれるため、5万円~数十万円かかることが一般的です。特に、実習が必要な介護系や、専用ソフトを使うWebデザイン系の資格は高くなる傾向があります。
前述の「おすすめの資格」で挙げたものを中心に、費用の目安を整理しました。
| 資格の種類 | 受験料の目安 | 独学の費用目安 | 通信・通学の費用目安 |
|---|---|---|---|
| 日商簿記(3級) | 約3,000円 | 2,000円~4,000円 | 1万円~3万円 |
| ITパスポート | 7,500円 | 3,000円~5,000円 | 2万円~4万円 |
| 医療事務 | 5,000円~8,000円 | 3,000円~5,000円 | 3万円~5万円 |
| MOS(一般レベル) | 10,780円 | 2,000円~4,000円 | 2万円~5万円 |
| 介護職員初任者研修 | (受講料に含む場合が多い) | (原則通学必須) | 5万円~10万円 |
※金額はあくまで概算であり、実施団体やスクール、時期によって異なります。
その他の費用にも注意 これらに加えて、試験会場までの交通費、証明写真代、合格後の「資格登録料」や「免許交付手数料」、あるいは数年ごとの「更新料」が必要になる資格もあります。トータルでいくら必要になるか、事前にシミュレーションしておくと安心です。
「思ったよりお金がかかる」と不安に感じるかもしれませんが、資格取得は将来の就職や収入アップにつながる重要な自己投資です。また、障がいのある方には、こうした経済的な負担を軽減するための公的な助成制度も用意されています。まずは必要なコストの全体像を把握した上で、賢く制度を利用していきましょう。
利用できる助成金や補助金
資格取得やスキルの習得にはどうしても費用がかかりますが、障がいのある方や求職中の方が経済的な負担を減らして挑戦できるよう、国や自治体による様々なサポート制度が用意されています。これらを賢く活用することで、自己負担額を大幅に抑えたり、場合によっては無料で学習できたりすることもあります。
ご自身の状況に合わせて利用を検討したい、主な制度は以下の通りです。
- 教育訓練給付制度(ハローワーク) 過去に働いていた経験があり、雇用保険に一定期間加入していた方が対象となる制度です。厚生労働大臣が指定する教育訓練講座(通信講座や専門学校のコースなど)を修了した場合、支払った受講費用の20%~最大70%がハローワークから支給されます。
- 特徴: 医療事務、介護職員初任者研修、情報処理技術者試験など、就職に役立つ多くの講座が対象となっています。
- ハロートレーニング(公的職業訓練・障害者委託訓練) 「学びながら就職を目指す」ための制度で、受講料は原則無料(テキスト代などは自己負担)です。特に障がいのある方を対象とした「障害者委託訓練」では、個別の配慮を受けながら、パソコンスキルやビジネスマナー、軽作業などの技能を習得できます。 また、雇用保険を受給できない方でも、世帯収入などの要件を満たせば、月額10万円の生活支援を受けながら訓練に通える「職業訓練受講給付金(求職者支援制度)」を利用できる場合があります。
- 自治体独自の助成制度 お住まいの地域によっては、市町村が独自に障害者の資格取得や技能習得を支援する助成金制度を設けている場合があります。対象となる資格や助成金額、申請条件は自治体によって大きく異なるため、市役所や区役所の「障害福祉課」などで確認してみましょう。
制度利用の注意点 これらの制度の多くは、「受講を開始する前の事前申請」や「ハローワークでの相談」が必要となります。「受講後に申請しようとしたら対象外だった」という事態を防ぐためにも、資格取得を考え始めた段階で、早めに最寄りのハローワークや自治体の窓口へ相談に行くことが大切です。
障がい者が資格を取得する際の注意点

受験資格の確認
いざ資格取得の勉強を始めようと思った時、教材を揃えるよりも先に必ず行っていただきたいのが「受験資格の確認」です。
どれほど熱心に勉強をして知識を身につけたとしても、そもそも試験を受けるための条件を満たしていなければ、本番の試験にエントリーすることができません。「せっかく勉強したのに受験できなかった」という事態を防ぐために、以下のポイントを事前にチェックしておきましょう。
- 学歴や実務経験の有無 資格によっては、「大学卒業以上」「関連職種での実務経験◯年以上」「下位の級に合格していること」など、明確な受験要件が定められているものがあります。特に、社会福祉士や精神保健福祉士といった国家資格や、上位レベルの技術系資格を目指す場合は注意が必要です。ご自身の経歴が要件を満たしているか、募集要項で細かく確認しましょう。
- 障がいに関連する規定(欠格事由など) かつては、特定の障がいがあることのみを理由に、資格取得や免許交付を一律に制限する規定(欠格条項)が多く存在しました。しかし現在では、法改正によりこうした制限はほとんど撤廃され、「障がいを理由に一律に排除しない」方向へと変わっています。 ただし、資格によっては「業務を適正に行うための能力があるか」を個別に判断される場合(相対的欠格事由)があります。不安な場合は、試験の主催団体や所管の省庁へ問い合わせ、自身の障害特性が欠格事由に該当しないか、免許取得が可能かを確認しておくと安心です。
- 合理的配慮を受けるための要件 試験当日に「試験時間の延長」「別室受験」「点字・拡大文字の使用」などの合理的配慮を希望する場合、その申請条件として障害者手帳のコピーや医師の診断書の提出が求められることが一般的です。手帳の等級や種別によっては、希望する配慮の内容と照らし合わせて事前の相談が必要になるケースもあります。
試験勉強は長期戦になることも多いため、スタート地点でつまずかないよう、まずは最新の試験要項(受験案内)を取り寄せ、自分が受験対象に含まれているか、どのような手続きが必要かをクリアにすることから始めましょう。
試験対策と時間管理
受験資格を確認し、いざ学習をスタートさせる段階で重要になるのが、長期間モチベーションを維持しながら、本番まで走り切るための「時間管理」と「効率的な対策」です。特に障がいのある方は、体調の変動や疲れやすさを考慮に入れた、無理のない計画作りが合否を分ける鍵となります。
ご自身の体調や特性を最優先にしつつ、着実に実力をつけるためのポイントを押さえておきましょう。
- 体調の波を前提とした「余白」のある計画 「毎日◯時間勉強する」と厳格に決めすぎると、体調が優れない日にノルマを達成できず、自己嫌悪に陥ったり挫折の原因になったりすることがあります。 あらかじめ「週に1〜2日は勉強できない日があってもOK」とする予備日を設けたり、調子の良い日に少し多めに進めたりするなど、スケジュールには十分な余白(バッファ)を持たせておくことが大切です。
- 短時間集中の「スキマ学習」を活用 集中力を長く保つことが難しい特性がある場合や、服薬の影響で眠気が出やすい場合は、長時間の勉強よりも「15分〜30分」といった短い時間の積み重ねが効果的です。 通院の待ち時間や移動時間、就寝前の少しの時間などを活用し、単語帳やスマホアプリで問題を解く習慣をつけると、負担を感じすぎずに学習を継続できます。
- 「過去問」中心の効率的な対策 すべての範囲を完璧に網羅しようとすると、膨大な時間とエネルギーが必要になります。多くの資格試験では、過去に出題された問題と似た傾向の問題が繰り返し出題されます。 テキストを最初から最後まで読み込むよりも、まずは過去問題集に取り組み、出題傾向や自分の苦手分野を把握してから、必要な部分を重点的に学習するスタイルの方が、限られた時間で合格ラインに到達しやすくなります。
- 自分に合った学習スタイルの確立 「文字を読むのが苦手」な場合は動画教材や音声読み上げ機能を活用する、「書いて覚えるのが得意」な場合はノートまとめを中心にするなど、ご自身の障害特性や得意な感覚(視覚優位・聴覚優位など)に合わせた学習方法を取り入れましょう。自分にとってストレスの少ない方法を見つけることが、学習効率を最大化させます。
資格取得はゴールではなく、その後の就労につなげるための手段です。試験勉強のために無理をして体調を崩してしまっては本末転倒ですので、「細く長く続ける」ことを意識して取り組んでみてください。
資格取得後のキャリアパス

就職活動のポイント
晴れて資格を取得できたとしても、それだけで自動的に就職が決まるわけではありません。重要なのは、苦労して手に入れたその資格を、就職活動の現場でどのように「活かす」かです。採用担当者に響くアピールを行うために、いくつかのポイントを押さえておきましょう。
まず基本となるのは、「履歴書・職務経歴書への正確な記載」です。 取得した資格は必ず正式名称で記入し、取得年月も正確に記します。特に勉強中の資格であっても、「〇〇資格取得に向けて学習中(〇月受験予定)」と書くことで、意欲や現在のスキルレベルを伝えることが可能です。
次に重要になるのが、「資格取得の背景(ストーリー)を語ること」です。 単に「資格を持っています」と伝えるだけでは不十分です。「なぜその資格を取ろうと思ったのか」という動機や、「そのスキルを使って御社でどのような貢献ができるか」というビジョンをセットで伝えることが大切です。 例えば、「以前は体を使う仕事をしていましたが、障害特性に合わせて長く安定して働ける事務職を目指し、PCスキルを証明できるこの資格を取得しました」といったように、自身のキャリアプランや障害受容のプロセスと絡めて話すことで、説得力が格段に増します。
また、障害者雇用の面接では、「できること」と「配慮してほしいこと」のバランスが重視されます。 資格は「できること(職業能力)」の客観的な証明になります。これを明確に示すことで、企業側も「この業務なら任せられそうだ」と具体的なイメージを持ちやすくなります。資格を武器に自身の能力をしっかりと提示した上で、必要な配慮事項を伝えるという建設的なコミュニケーションを心がけましょう。
転職市場でのアピール方法
既に社会人経験がある方が転職を目指す場合、あるいは未経験の分野へキャリアチェンジを図る場合、資格はご自身の市場価値を高めるための強力なツールとなります。特に転職市場においては、新卒採用とは異なるアピールの視点が必要です。
転職活動において資格を効果的にアピールするための方法は、主に以下の3点です。
- 未経験分野への「本気度」と「基礎能力」の証明 全く経験のない職種へ転職する場合、企業側は「本当に仕事についていけるか」「すぐに辞めてしまわないか」という懸念を持ちます。この時、関連資格を取得していることは、単なる興味本位ではなく、本気でその職種を目指して準備をしてきたという「熱意」と、最低限の知識を持っているという「基礎能力」の裏付けになります。実務経験の不足を補うための有効な材料といえます。
- ブランク(空白期間)を前向きな期間として説明する 障がいの治療や療養のために、職歴に空白期間(ブランク)がある方も少なくありません。面接でその期間について質問された際、「療養しながら資格の勉強をしていました」と答えることができれば、空白期間を単なる休みの期間ではなく、復職に向けた準備期間として前向きに過ごしていたことの証明になります。これは、就労意欲の高さや、計画的に物事を進める力をアピールする上で非常に効果的です。
- 専門性と向上心のアピール 既に経験のある職種で転職する場合、より上位の資格や専門特化した資格を持っていることは、スキルの高さだけでなく、「常に学び続ける向上心がある人材」としての評価につながります。特に変化の激しいIT業界や、制度改正の多い福祉・金融業界などでは、最新の知識をアップデートし続ける姿勢が高く評価されます。
転職エージェントなどを利用する際も、資格があることで紹介される求人の幅が広がったり、より条件の良い非公開求人を紹介してもらえたりする可能性が高まります。資格を単なる「免許」としてだけでなく、ご自身のキャリアを切り拓くための「プレゼンテーション材料」として存分に活用してください。
まとめ ~就労継続支援B型という選択肢~

障がい者が抱える資格取得の悩みとその解決策まとめ
ここまで、障がいのある方が資格取得を目指す上でのメリットや具体的な方法、注意点について解説してきました。しかし、実際に一歩を踏み出そうとすると、様々な不安や現実的な課題に直面することも事実です。
多くの人が抱える代表的な悩みと、それに対する解決策や考え方を改めて整理しました。これらは決してあなた一人だけの悩みではなく、適切な対処法や支援を活用することで乗り越えられる壁でもあります。
| よくある悩み | 解決策のヒント |
|---|---|
| 勉強が続かない・集中できない | 「スモールステップ」と「環境調整」 毎日長時間やるのではなく、「1日15分」から始めるなどハードルを下げましょう。体調が悪い日は休んでOKとする柔軟な計画や、集中しやすい時間帯(朝だけ、夜だけ等)を見つけることが大切です。 |
| 費用が工面できるか不安 | 「公的支援」のフル活用 ハローワークの教育訓練給付制度や、自治体の助成金、無料の職業訓練(ハロートレーニング)などを活用しましょう。まずは役所や支援機関の窓口で「使える制度はないか」相談することから始めてみてください。 |
| 試験会場へ行けるか心配 | 「合理的配慮」の申請 別室受験、試験時間の延長、車椅子席の確保など、障害特性に応じた配慮を申請する権利があります。事前に主催団体へ相談し、安心して受験できる環境を整えましょう。 |
| 資格を取っても働けるか不安 | 「就労支援機関」との連携 資格はあくまで武器の一つです。それをどう活かすか、自分に合う職場はどこかについて、就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターなどの専門家と一緒に考え、マッチングを図ることが近道です。 |
資格取得への道のりは、決して平坦ではないかもしれません。しかし、直面する課題の一つひとつには必ず解決の糸口があります。
重要なのは、すべての課題を「自分一人の力」で解決しようとしないことです。学習計画の作成から、費用の相談、就職活動でのアピール方法に至るまで、周囲の支援者や公的な制度を頼ることは恥ずかしいことではなく、就労への確実なステップアップになります。焦らず、ご自身のペースで一つずつ不安を解消していきましょう。
就労継続支援B型という選択肢

(タップして拡大)
ここまで、資格取得を通じた就職やキャリアアップについて解説してきましたが、中には「今の体調で毎日勉強を続ける自信がない」「いきなり就職活動をするのはハードルが高い」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。
そうした不安がある場合、無理に一般就労や就労移行支援を目指すのではなく、「就労継続支援B型」からスタートするという選択肢もあります。
就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに、ご自身の障がいや体調に合わせて自分のペースで働ける福祉サービスです。「資格取得とは無縁の場所」というイメージを持たれることもありますが、近年ではそのあり方も多様化しています。
- 資格取得支援を行う事業所の増加 以前は軽作業や手工芸が中心でしたが、最近ではパソコン作業に特化し、ITパスポートやMOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)、Webデザイン技能検定などの資格取得カリキュラムを提供しているB型事業所も増えています。
- 自分のペースで学びながら働く 一般的なスクールとは異なり、体調に合わせて通所日数や時間を調整できるのが最大の特徴です。支援員のサポートを受けながら、無理のない範囲で学習を進め、同時に作業工賃を受け取ることができるため、社会参加の第一歩として適しています。
- ステップアップの土台として B型事業所を「最終的なゴール」にする必要はありません。まずはここで生活リズムを整え、資格を取得して「自分にもできる」という自信をつけてから、就労継続支援A型や一般就労(障害者雇用)へとステップアップしていく方も多くいらっしゃいます。
資格取得は、あくまで「なりたい自分」に近づくための手段の一つです。最短ルートを目指すことだけが正解ではありません。ご自身の心身の健康を第一に考え、まずはB型事業所でじっくりと力を蓄えるという道も、立派なキャリア形成の一つといえるでしょう。
もし「働きたいけれど不安が大きい」と感じているなら、まずはB型事業所を見学してみるのはいかがでしょうか。
私たち就労継続支援B型カチカでは、障がいを持つ方が自分のペースで短時間から始められる作業や特性を最大限に活かせる仕事を通じて、「自分に合った持続可能な働き方」 を見つけるお手伝いをいたします。











