障害を開示せずに働く「クローズ就労」。この選択肢は、より広い求人の選択肢と高い待遇への道を開く一方で、特有の課題やリスクも伴います。この記事では、クローズ就労という働き方を多角的に分析し、あなたが自分自身の状況とキャリアプランに最適な道筋を見つけるための、具体的な情報と判断材料を網羅的に解説します。
漠然とした不安を、納得のいくキャリア選択へと変えるために。この記事を最後まで読むことで、以下の点が明確になります。
- クローズ就労の正確な定義と、オープン就労との具体的な違い
- クローズ就労という働き方が向いている人の特徴と、成功するための職場選びの重要なポイント
- うつ病や統合失調症など、精神障害のある方がクローズ就労で働く際に特に注意すべきこと
この記事は、障害と向き合いながらも、ご自身の能力を最大限に活かし、納得のいくキャリアを築きたいと願う、以下のような方々に向けて執筆しています。
- 障害者雇用枠の求人数や待遇に、選択肢の狭さを感じている方
- 障害への先入観や偏見を避け、一人のビジネスパーソンとして対等な環境で働きたい方
- クローズ就労に興味はあるが、リスクやデメリットが分からず一歩踏み出せないでいる方
この記事が、あなたらしい働き方を見つけるための、信頼できる道しるべとなれば幸いです。
Contents
クローズ就労とは?

クローズ就労の定義と特徴
クローズ就労とは、自身の障害や病気について、応募先の企業や職場に開示せずに(伝えないで)就職し、働くことを指します。採用選考の段階から入社後に至るまで、障害を公にしない働き方です。
この働き方は、障害者雇用枠ではなく「一般雇用枠」での応募が基本となり、障害のない応募者と同じ土俵で選考を受けることになります。そのため、職場からは障害に関する特別な配慮は受けずに働くことが前提となります。
クローズ就労の主な特徴は以下の通りです。
- 一般雇用枠での就職活動 障害者雇用に限定されず、幅広い求人の中から応募先を選ぶことができます。
- 障害を非開示 履歴書への記載や面接での申告は行わず、上司や同僚も障害があることを知らない状態で働きます。
- 合理的配慮は求めない 通院のための休暇や、業務内容・量の調整、職場環境の整備といった、障害特性に応じた配慮を企業に求めることは基本的にありません。
- 自己管理能力が求められる 体調管理やストレスコントロールなど、自身の障害特性を理解し、仕事に影響が出ないよう自分で管理しながら働く必要があります。
つまりクローズ就労は、障害を背景とせず、あくまで個人のスキルや経験に基づいて評価され、キャリアを築いていく働き方といえるでしょう。
クローズ就労が選ばれる理由
障害を開示しないクローズ就労が選ばれる背景には、個人の価値観やキャリアプランに応じた、様々な理由があります。配慮が得られないという側面がありながらも、なぜこの働き方が選択されるのでしょうか。主な理由として、以下の点が挙げられます。
- 求人の選択肢を広げたい 障害者雇用枠に比べ、一般雇用枠は求人数が圧倒的に多く、職種や業種のバリエーションも豊富です。自分のスキルや経験を活かせる仕事、挑戦したい仕事が一般雇用枠にしかない場合、クローズ就労が現実的な選択肢となります。
- より良い給与や待遇を求めるため 一般的に、障害者雇用枠よりも一般雇用枠の方が給与水準が高い傾向にあります。自身の能力に見合った正当な評価と待遇を得て、経済的な安定を図りたいという考えも、クローズ就労を選ぶ大きな動機の一つです。
- キャリアアップを視野に入れている 昇進や昇格、責任あるポジションへの挑戦など、長期的なキャリア形成を考えた際に、一般雇用のほうが機会に恵まれていると感じる人もいます。障害の有無に関わらず、対等な立場でキャリアを築いていきたいという意欲が背景にあります。
- 障害への先入観や偏見を避けたい 職場において「障害者」として特別扱いされたり、能力を低く見積もられたりすることを避けたいという心理的な理由も少なくありません。障害を意識されることなく、一人の個人として、対等な人間関係の中で働きたいと考える場合に選ばれます。
- プライバシーを重視したい 自身の障害や病気に関する情報は、非常にデリケートな個人情報です。仕事とプライベートを明確に分け、職場では自身の障害について触れずに働きたいという考え方も、クローズ就労を選択する理由となります。
クローズ就労のメリット

高い給与水準と豊富な求人数
クローズ就労を選択する大きなメリットの一つが、給与水準と求人の選択肢にあります。
一般雇用枠で応募するため、障害者雇用枠と比較して給与水準が高い傾向が見られます。障害の有無に関わらず、個人のスキルや経験、実績が評価の対象となるため、能力に応じた待遇を得やすい環境といえるでしょう。昇給や賞与の機会も他の社員と同様に与えられるため、経済的な安定や向上を目指すことが可能です。
また、求人数の豊富さも特筆すべき点です。
- 幅広い選択肢: 障害者雇用枠に限定されず、あらゆる業界・職種の求人に応募できます。
- 専門性の追求: これまで培ってきた専門的なスキルや経験を活かせる、より高度なポジションに挑戦しやすくなります。
- キャリアの多様性: 自身のキャリアプランに沿って、柔軟に仕事を選ぶことができるため、将来の可能性が大きく広がります。
このように、応募できる企業の数や職種が格段に増えることで、自身の希望や能力に合った職場を見つけられる可能性が高まります。
キャリアアップの可能性
クローズ就労は、長期的な視点でキャリアを形成していく上で、多くの可能性を秘めています。障害の有無に関わらず、他の社員と同じ土俵で評価されるため、キャリアパスが限定されにくいという特徴があります。
具体的には、以下のような点でキャリアアップにつながる可能性があります。
- 公平な評価と昇進機会 障害を理由に業務範囲や役割が限定されることがないため、成果や能力が正当に評価されやすい環境です。これにより、他の社員と同様に昇進や昇格の機会を得ることが期待できます。
- 多様な業務経験 責任あるポジションや難易度の高いプロジェクトにも挑戦しやすくなります。幅広い業務を経験することは、着実なスキルアップにつながり、自身の市場価値を高めることにも貢献します。
- マネジメントへの道筋 将来的に管理職を目指す場合でも、一般雇用のキャリアパスに乗ることで、その道筋が描きやすくなるでしょう。
このように、自身の能力を最大限に活かし、キャリアの可能性を広げたいと考える方にとって、クローズ就労は有力な選択肢となります。
職場環境の選択肢
クローズ就労は、応募できる企業の数が多いため、結果的に職場環境の選択肢も大きく広がります。障害者雇用を実施している企業に限定されることなく、自分の価値観や希望する働き方に合わせて就職先を探せる点は、大きな利点といえるでしょう。
具体的には、以下のような点で選択の幅が広がります。
- 企業規模や文化 障害者雇用の実績がまだ少ない中小企業や、特定の専門分野に特化したベンチャー企業など、一般雇用でなければ出会えない多様な企業が視野に入ります。これにより、実力主義、チームワーク重視、自由な雰囲気といった、自分が望む社風の企業を見つけやすくなります。
- 働き方の多様性 リモートワークやフレックスタイム制度など、柔軟な働き方を導入している企業も選択肢となります。自分のライフスタイルや体調管理のしやすさに合わせて、最適な勤務形態を選ぶことが可能です。
- 人間関係 職場において、障害を意識されることなく、他の社員と対等な立場で関係を築くことができます。過度な配慮や遠慮がない、フラットなコミュニケーション環境を望む方にとっては、心理的な負担が少ない働き方となり得ます。
このように、自分に合った環境を主体的に選べる可能性が高まることは、仕事への満足度や長期的な就労継続につながる重要なメリットです。
クローズ就労のデメリット

障害を隠すことによるストレス
障害を隠して働くクローズ就労は、メリットがある一方で、精神的な負担を伴うことがあります。障害を開示していないがゆえに生じる特有のストレスは、デメリットの大きな側面といえるでしょう。
主なストレス要因としては、以下のような点が挙げられます。
- 体調や症状に関する緊張感 障害特性による症状や体調の波が出た際に、その本当の理由を説明できません。「少し疲れていて」「寝不足で」など、別の理由を取り繕う必要があり、周囲に悟られないかという緊張感が常に伴います。
- 孤独感と孤立 職場に自身の状況を理解してくれる人がいないため、仕事上の悩みや体調面の不安を一人で抱え込みがちになります。誰にも相談できないという状況は、精神的な孤立感を深める原因となる可能性があります。
- 自己管理への過度なプレッシャー 仕事に影響が出ないよう、体調管理や症状のコントロールを完璧に行わなければならないというプレッシャーは、大きな負担となり得ます。少しのミスが障害のせいではないかと不安になったり、常に気を張り詰めていたりすることで、心身が疲弊してしまうことも少なくありません。
- 通院などでの嘘への罪悪感 定期的な通院が必要な場合、休暇の理由を正直に言えないため、仮病を使うなど嘘をつく必要が出てきます。こうした小さな嘘を重ねることに対し、罪悪感やストレスを感じる人もいます。
これらの精神的な負担が積み重なることで、かえって症状が悪化してしまったり、仕事のパフォーマンスが低下したりするリスクも考えられます。
必要な配慮が得られないリスク
クローズ就労は、障害を企業に開示しない働き方であるため、障害特性に応じた「合理的配慮」を求めることができません。これは、クローズ就労が抱える最も大きなリスクの一つです。自分一人で対応できる範囲を超えた困難が生じた場合でも、周囲からのサポートは期待できないという前提に立つ必要があります。
具体的に、以下のような配慮が得られない可能性があります。
- 勤務時間に関する配慮 体調の波に合わせた勤務時間の調整、通院のための定期的な休暇取得、ラッシュアワーを避けた時差出勤など。
- 業務内容・量の調整 過度な負担がかからないような業務量の調整、苦手な作業(例:頻繁な電話応対、マルチタスクが要求される業務など)の免除や変更。
- 職場環境に関する配慮 聴覚過敏のための静かな座席への移動、視覚情報の刺激を減らすためのパーテーション設置、疲労時に短時間休憩できるスペースの確保など。
- 緊急時の対応 体調が急に悪化したり、パニックになったりした際に、その原因が障害にあることを周囲が理解できないため、適切な対応を得られない可能性があります。
これらの配慮が得られないことで、無理をして働き続けた結果、体調を崩してしまったり、仕事のパフォーマンスが低下してしまったりする恐れがあります。それが周囲からの「仕事ができない」「意欲が低い」といった誤解につながり、最終的に就労継続が困難になるケースも少なくありません。
支援機関との連携不足
クローズ就労を選択した場合、就労移行支援事業所や障害者就業・生活支援センターといった支援機関との連携が取りにくくなるという側面があります。企業側が本人の障害について把握していないため、支援機関が職場と直接やり取りをすることが困難になるためです。
具体的には、以下のような状況が考えられます。
- 職場定着支援の利用制限 オープン就労であれば、支援機関の担当者が定期的に職場を訪問し、上司との面談などを通じて働きやすい環境を調整する「職場定着支援」を受けられます。クローズ就労では、この直接的なサポートを受けることができません。
- トラブル発生時の介入の難しさ 職場で人間関係や業務上の困難が生じた際、支援機関に相談はできても、支援機関が企業側に働きかけて問題を解決することはできません。あくまで本人へのアドバイスに留まるため、根本的な解決に至らないケースがあります。
- 孤立感の増大 職場には相談できず、支援機関も直接介入できないという状況は、働く本人が問題を一人で抱え込み、孤立感を深める原因となり得ます。
このように、本来受けられるはずの公的なサポートが制限される点は、クローズ就労の大きなデメリットです。問題が深刻化する前に対処する機会を失い、就労の継続が難しくなるリスクも考慮する必要があります。
オープン就労との違い

オープン就労の定義と特徴
オープン就労は、クローズ就労とは対照的に、自身の障害や病気の内容を応募先の企業に開示して就職する働き方を指します。これにより、企業側から障害の特性に応じた「合理的配慮」を受けながら働くことが可能になります。
一般的に「障害者雇用枠」での応募となりますが、一般雇用枠で選考に進み、その過程で障害を開示するケースも含まれます。
オープン就労の主な特徴は以下の通りです。
- 障害の開示と理解の促進 応募書類への記載や面接の段階で障害について伝え、入社後も上司や関係者に情報が共有されます。これにより、自身の状況に対する職場の理解を得やすくなります。
- 合理的配慮の提供 オープン就労の最も大きな特徴です。通院のための休暇取得、業務内容や量の調整、休憩の取り方、物理的な環境整備など、働きやすくなるための配慮を企業に相談・要請することができます。
- 支援機関との連携 就労移行支援事業所やハローワーク、障害者就業・生活支援センターといった支援機関が、本人と企業との橋渡し役となることがあります。就職後の職場定着支援など、継続的なサポートを受けやすい点も特徴です。
- 障害者雇用枠での就職活動 多くの場合は、障害者雇用を前提とした求人に応募します。そのため、採用の段階から企業側に障害者雇用への理解があり、受け入れ態勢が整っていることが期待できます。
オープン就労は、障害との上手な付き合い方を模索しながら、安定して就労を継続することを目指す方に適した働き方といえるでしょう。
クローズ就労とオープン就労の比較
クローズ就労とオープン就労は、それぞれにメリットとデメリットがあり、どちらが優れているということではありません。自身の障害の状況や症状の安定度、キャリアプラン、そして働く上で何を重視するかによって、最適な選択は異なります。
ここでは、両者の主な違いを比較表にまとめました。自分に合った働き方を見つけるための判断材料としてご活用ください。
比較項目 | クローズ就労 | オープン就労 |
---|---|---|
障害の開示 | 企業に開示しない | 企業に開示する |
応募枠 | 一般雇用枠 | 主に障害者雇用枠 |
合理的配慮 | 原則として受けられない | 相談・要請が可能 |
求人の選択肢 | 求人数が多く、職種も豊富 | 求人数や職種が限定される傾向 |
給与・待遇 | 高い傾向にある | 相対的に低い傾向にある |
キャリアパス | 昇進などキャリアアップの機会が多い | 業務内容が限定され、キャリアパスが限られる場合がある |
精神的側面 | 障害を隠すストレスや孤独感を抱えやすい | 障害への偏見や過度な配慮に悩む可能性がある |
外部支援との連携 | 支援機関が職場に直接介入しにくい | 支援機関による職場定着支援などを受けやすい |
求められること | 高い自己管理能力、障害による影響が業務に少ないこと | 自身の障害特性や必要な配慮を的確に伝える能力 |
このように、クローズ就労は給与やキャリアの可能性を追求しやすい反面、自己管理の責任が重く、サポートが得られにくいという特徴があります。一方、オープン就労は安定して働き続けるための配慮や支援を得やすいものの、求人の選択肢や待遇面で制約が生じる可能性があります。
どちらの働き方を選ぶかは、ご自身の状況を客観的に見つめ直し、長期的な視点で検討することが重要です。
クローズ就労における就職先選びのポイント

就職先選びの重要なポイント
クローズ就労は、企業からの配慮を前提としない働き方であるため、就職先を慎重に見極めることが、安定して長く働くための鍵となります。応募段階や面接を通じて、自分に合った環境かどうかを判断するための重要なポイントをいくつかご紹介します。
- 1.働き方の柔軟性・・・ 体調の波や通院の必要性などを考慮すると、柔軟な働き方ができる企業は大きな魅力となります。
- フレックスタイム制度: コアタイム以外は出退勤時間を調整できるため、朝の体調が優れない日や、ラッシュを避けた通勤が可能です。
- リモートワーク(テレワーク): 通勤の負担がなく、自分のペースで仕事を進めやすい環境です。
- 休暇の取りやすさ: 有給休暇の取得率が高い、時間単位や半日単位での休暇取得が可能など、休みやすい雰囲気や制度が整っているかを確認しましょう。
- 2.業務内容との相性 ・・・自身の障害特性や得意・不得意を客観的に理解し、無理なく遂行できる業務内容かを見極めることが重要です。
- 業務のペース: 自分の裁量で仕事のペースを調整しやすい職種(例:専門職、技術職など)か、常に外部からの要求に応える必要があるか。
- ストレスの少ない業務: 過度なマルチタスクや頻繁な電話応対、クレーム対応など、自身が強いストレスを感じる業務が少ないかを確認します。
- スキルとの合致: これまでの経験やスキルを活かせる仕事であれば、自信を持って取り組むことができ、余計なストレスを減らすことにつながります。
- 3.労働環境と企業文化 ・・・求人票の数字だけでは見えにくい、社内の雰囲気や労働環境も重要な判断材料です。
- 平均残業時間や離職率: これらの数値は、働きやすさの一つの指標となります。客観的なデータを確認することが大切です。
- 口コミサイトの活用: 実際に働いている人や退職者の声は、企業文化や人間関係を知る上で参考になります。ただし、情報の偏りには注意が必要です。
- 多様性への理解: 企業がダイバーシティ&インクルージョンを推進している場合、多様な働き方や価値観に対する理解がある可能性が高いといえます。
これらのポイントを総合的に検討し、自分にとってリスクが少なく、能力を発揮しやすい職場環境を選ぶことが、クローズ就労を成功させる上で不可欠です。
クローズ就労が向いている人の特徴
クローズ就労は、メリットとデメリットを理解した上で、自分自身の状況に合っているかを慎重に判断する必要があります。一般的に、以下のような特徴を持つ方は、クローズ就労という働き方を選択しやすい傾向にあります。
- 障害の症状が安定している方 日々の業務に大きな支障をきたすほどの症状の波がなく、服薬や生活習慣の工夫によって安定した状態を維持できることは、重要な要素です。企業からの特別な配慮がなくても、継続して勤務できる見込みがあることが前提となります。
- 自己管理能力が高い方 自身の障害特性や体調の変化を客観的に把握し、適切なセルフケアができる能力は不可欠です。ストレスのサインを早めに察知して対処したり、仕事に影響が出ないよう生活リズムを整えたりと、自律的にコンディションを管理できることが求められます。
- 一般雇用枠で通用するスキルや経験がある方 クローズ就労では、障害のない応募者と同じ基準で選考が行われます。そのため、これまでの職務経験や専門知識、保有資格など、自身の能力を明確にアピールできる強みを持っていることが望ましいでしょう。
- キャリアアップへの意欲が高い方 給与水準や昇進・昇格の機会を重視し、長期的なキャリア形成を積極的に目指したいと考えている方にとって、クローズ就労は魅力的な選択肢となり得ます。障害を意識せず、実力で評価されたいという思いが強い方も向いているといえます。
- 精神的な負担を乗り越えられる方 障害を隠して働くことによる精神的なプレッシャーや、必要な配慮を得られないことへの割り切りが必要です。職場とは別に、家族や友人、主治医、カウンセラーなど、いざという時に相談できるサポート体制を個人的に確保できていることも大切になります。
これらの特徴はあくまで一つの目安です。ご自身の価値観や将来の目標と照らし合わせ、最適な働き方を選択することが重要となります。
クローズ就労に関するよくある質問

クローズ就労に関するFAQ
クローズ就労を検討するにあたり、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で解説します。就職活動や入社後の働き方を考える上での参考にしてください。
Q1. 障害があることを隠して就職するのは、法律的に問題ありませんか?
A1. 労働者側から自発的に障害を開示する「告知義務」はないため、クローズ就労自体が違法となることはありません。ただし、採用面接などで健康状態について質問された際に、業務遂行に重大な影響があるにもかかわらず虚偽の申告をした場合、後から「経歴詐称」と見なされるリスクはゼロではありません。基本的には、業務に支障がない範囲であれば、詳細を伝える必要はないとされています。
Q2. 面接で健康状態について聞かれた場合、どのように答えればよいですか?
A2. 最も一般的な回答は「業務に支障はありません」というものです。完全に嘘をつくことは避けるべきですが、詳細な病名まで伝える必要はありません。例えば、「持病はありますが、自己管理を徹底しており、業務遂行に影響はありません」「定期的な通院はありますが、勤務時間外で調整可能です」など、就労意欲と自己管理能力があることを前向きに伝えるとよいでしょう。
Q3. クローズで入社した後、どうしても辛くなった場合、オープンに切り替えることはできますか?
A3. 可能です。まずは信頼できる直属の上司や、人事部の担当者などに相談することになります。オープンに切り替えることで、必要な配慮を受けられるようになるメリットがありますが、一方で人間関係の変化や、任される業務内容が変わる可能性も考慮する必要があります。切り替えを検討する際は、事前に主治医やカウンセラー、支援機関などに相談し、どのように伝え、どのような配慮を求めるかを整理しておくことが大切です。
Q4. クローズ就労中に障害者手帳を取得・更新したら、会社に知られてしまいますか?
A4. 本人が申告しない限り、会社が障害者手帳の有無を調べることはできないため、知られることは基本的にありません。ただし、年末調整で「障害者控除」を受けようとする場合は、会社に申告する必要があるため、その際に障害があることが伝わります。会社に知られずに控除を受けたい場合は、年末調整では申告せず、後から個人で確定申告を行うという方法があります。
Q5. 結局、クローズとオープン、どちらを選ぶべきか迷っています。
A5. どちらの働き方が最適かは、個人の状況によって異なります。以下の点を総合的に考慮して判断するとよいでしょう。
- 症状の安定度: 業務に支障がない程度にコントロールできているか。
- 自己管理能力: 自身の体調やストレスを客観的に把握し、対処できるか。
- 求める条件: 給与やキャリアを優先するのか、安定した就労継続を優先するのか。
- 必要な配慮: どのような配慮があれば働きやすいか、またそれがなくても働けるか。
一人で結論を出すのが難しい場合は、主治医や家族、就労移行支援事業所などの専門機関に相談し、客観的なアドバイスを求めることをお勧めします。
障害者雇用に関するTIPS
障害のある方が就職を考える際、特にクローズ就労を選択肢に入れる場合でも、障害者雇用に関する基本的な知識を持っておくことは有益です。ここでは、知っておくと役立ついくつかのポイントをご紹介します。
- 障害者雇用率制度(法定雇用率) 「障害者雇用促進法」に基づき、企業は従業員数に応じて一定割合以上の障害者を雇用することが義務付けられています。これを法定雇用率といいます。多くの企業が障害者採用に積極的な背景には、この制度の存在があります。クローズ就労の場合、この雇用率には算定されませんが、企業の障害者雇用に対する姿勢や取り組みを知る上で、こうした背景を理解しておくことは参考になるでしょう。
- 「合理的配慮」とは オープン就労で求められる「合理的配慮」は、障害のある人がない人と同様に働く権利を確保するため、企業側が過度な負担にならない範囲で提供する配慮のことです。クローズ就労ではこれを求めることはできませんが、「自分にはどのような配慮があれば働きやすいのか」を自己分析する良い指標になります。
- 例:業務内容の調整、通勤方法への配慮、休憩の取り方の工夫、指示の出し方の明確化など。 これらを洗い出すことで、「配慮がなくても業務遂行が可能か」を判断する材料となり、クローズ就労を選択する際の自己評価にもつながります。
- 障害者手帳の役割 障害者雇用枠で就職するためには、原則として障害者手帳(身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳)の所持が必要です。クローズ就労の場合は手帳の有無を伝える必要はありませんが、手帳を所持していることで、所得税・住民税の障害者控除や、公共料金の割引など、仕事以外の面で様々な福祉サービスを受けられるメリットがあります。
- 就労支援機関の活用 就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどの専門機関は、オープン就労だけでなく、クローズ就労を目指す方のサポートも行っています。
- 自己分析やキャリアの棚卸し
- 応募書類の添削、面接対策
- 就職後の相談(職場への直接的な介入は難しいですが、本人へのカウンセリングやアドバイスは可能です) 一人で就職活動を進めるのが不安な場合、こうした外部の支援を頼ることも有効な手段の一つです。
まとめ

クローズ就労は、障害を開示せずに一般雇用枠で働く選択肢であり、高い給与水準や豊富な求人数、キャリアアップの可能性、多様な職場環境を選べるメリットがあります。一方で、障害を隠すことによる精神的ストレス、必要な配慮が得られないリスク、支援機関との連携不足といったデメリットも伴います。
オープン就労は障害を開示し、合理的配慮を受けながら働く方法で、安定した就労継続が期待できますが、求人の選択肢や待遇が限定される傾向があります。
就職先を選ぶ際は、自身の症状の安定度、自己管理能力、求める条件(給与・キャリアか安定か)、必要な配慮の有無を総合的に考慮することが重要です。特に精神障害のある方は、主治医との連携、セルフモニタリング、ストレス管理、適切な職場選びが成功の鍵となります。
どちらの働き方を選ぶかは個人の状況によって異なり、一人で悩まずに主治医や就労支援機関などの専門家と相談することをお勧めします。クローズ就労であっても、障害者雇用に関する基本的な知識を持つことは、より良い働き方を見つける上で役立ちます。