障害者雇用ってどんなルール?分かりやすく解説!

明るいリビングのソファで、クッションの上に置いたノートパソコンを笑顔で操作する若い男性。

1. 障害者雇用って何?みんなで働く社会を目指して

1-1.障害者雇用が大切にされる理由

「障害者雇用」と聞くと、「法律で決まっているからやっているだけなのでは?」と感じる方もいるかもしれません。もちろん、そういった側面も無いとは言えませんが、最近では、それだけではない、もっと積極的で、私たち求職者にとってもポジティブな理由で、障害者雇用を大切に考える企業が増えてきています。

・「ルール」から「戦力」へ。変化する企業の意識

まず知っておきたいのは、多くの企業が今、純粋に「良い人材が欲しい」と考えている、ということです。少子高齢化などの影響もあり、企業間の人材獲得競争は年々激しくなっています。そうした中で、「障害があるから」という理由だけで、才能ある人材や、まじめに仕事に取り組んでくれる人材を候補から外してしまうのは、企業にとって大きな損失である、という考え方が広がってきました。

つまり、単に法律上の義務を果たすためだけでなく、会社の成長に必要な「戦力」として、障害の有無にかかわらず、多様な人材の能力に期待し、採用活動を行う企業が増えているのです。

・在宅勤務の普及がもたらした「新しいものさし」

もう一つの大きな変化は、「在宅勤務」という働き方が普及したことです。これまでは、「毎日オフィスに通えること」が働く上での前提条件の一つでしたが、在宅勤務が普及したことで、その前提が大きく変わりました。

これにより、企業が人材を評価する「ものさし」も変化しています。通勤の可否といった物理的な条件よりも、「その仕事に必要なスキルを持っているか」「コミュニケーションをきちんと取りながら、責任を持って業務を遂行できるか」といった、より本質的な能力が重視されるようになったのです。

この「新しいものさし」は、通勤に困難を抱えていた方や、慣れた環境でこそ能力を発揮しやすい方にとって、大きな追い風と言えるでしょう。企業側も、場所という制約なしに、全国から優秀な人材を探せるようになりました。その結果、これまで出会えなかったような才能ある障害のある方々と繋がる機会が増え、その価値を再認識するきっかけになっています。

このように、障害者雇用は、障害の有無を問わず、意欲と能力のある人材に活躍の場を提供する取り組みであり、単なる義務や社会貢献という側面だけでなく、企業が成長するための人材戦略や、新しい働き方の広がりといった、非常に現実的で前向きな理由からも、その重要性が高まっているのです。

1-2.国が定めている「障害者雇用促進法」ってどんな法律?

「法律」と聞くと、少し難しく感じてしまうかもしれません。でも、「障害者雇用促進法」は、障害のある方が安心して仕事を探し、自分らしく働き続けるための、いわば「心強いサポーター」のような存在です。この法律が、あなたの仕事探しにどのように関わってくるのか、特に大切な2つのポイントを見ていきましょう。

・「法定雇用率」が、あなたのチャンスを広げる

この法律の大きな柱の一つに、「法定雇用率」という制度があります。これは、国が企業に対して「従業員のうち、これくらいの割合は障害のある方を雇ってくださいね」と具体的な目標を定めているものです。

求職者の視点から見ると、これは「企業側には、障害のある方を採用するための席が、あらかじめ用意されている」と考えることができます。特に、一定以上の規模の企業はこの目標を達成する義務があるため、障害のある方の採用に積極的です。これにより、「障害者雇用枠」という、配慮やサポートを得やすい採用の入り口が生まれています。この法定雇用率は、社会の変化に合わせて見直され、近年は引き上げられる傾向にあるため、活躍のチャンスはさらに広がっていると言えるでしょう。

・「差別の禁止」と「合理的配慮」という二つの安心

この法律は、採用選考から入社後まで、あなたが安心して働けるための大切なルールも定めています。

一つは「差別の禁止」です。これは、企業が障害があるという理由だけで、採用を断ったり、お給料や昇進で不公平な扱いをしたりしてはいけない、というルールです。あなたの能力や意欲が、障害を理由に正当な評価を受けられない、といったことがないように守ってくれます。

もう一つが「合理的配慮」です。これは、あなたが働く上で困難に感じること(例えば、通勤や職場での移動、パソコン操作、コミュニケーションなど)がある場合に、企業側がその困難を取り除くための工夫やサポートを提供する義務がある、というものです。大切なのは、これが企業の一方的な善意ではなく、法律に基づいた義務であるという点です。もちろん、企業にとって過度な負担にならない範囲で、ということになりますが、「こういうサポートがあれば、もっと能力を発揮できます」と、前向きに相談し、一緒に働きやすい環境を作っていくことができます。

このように、「障害者雇用促進法」は、雇用の機会を確保し、働く上での不安を取り除いてくれる、あなたのための大切な法律です。こうしたルールがあることを知っておくことは、自信を持って就職活動に臨むための、大きな力になるはずです。

2. 会社が障害者を雇う「義務」と「サポート」の仕組み

2-1.会社に求められる「障害者雇用率」とは

障害者雇用促進法の中でも、私たちの仕事探しに特に大きく関わってくるのが、「障害者雇用率制度(法定雇用率)」です。これは、企業が障害のある方を採用する大きな動機付けとなっている、とても大切な仕組みです。ここでは、その具体的な内容と、私たちの仕事探しにどう影響するのかを見ていきましょう。

・どんな会社が対象?具体的なルール

「障害者雇用率制度」とは、簡単に言うと、企業に対して「従業員全体の数に対して、〇%以上は障害のある方を雇用してください」と法律で定められた目標のことです。

このルールは、すべての企業に当てはまるわけではなく、従業員が一定数以上いる企業が対象となります。そして、民間企業に求められる法定雇用率は、2025年時点で2.5%ですが、この割合は今後も段階的に引き上げられる予定です。これは、社会全体で障害のある方の働く機会をさらに増やしていこうという動きの表れです。

また、この割合を計算する際には、障害の程度に応じてカウント方法が異なり、きめ細やかなルールが定められています。

・この制度が「あなたの仕事探し」に与える影響

では、この制度は、私たちの仕事探しに具体的にどう影響するのでしょうか。最も大きな影響は、「障害者雇用枠」という形で、障害のある方を対象とした求人が生まれることです。

特に従業員数の多い大企業ほど、この法定雇用率を達成するために、より多くの障害のある方を採用する必要があります。そのため、大企業やそのグループ会社では、障害のある方を対象とした採用活動を計画的に、かつ積極的に行っていることが多いのです。

この「障害者雇用枠」の求人は、多くの場合、障害に対する理解や配慮が得られやすい環境が整っています。法定雇用率という具体的な目標があるからこそ、企業側も採用後のサポート体制や職場環境の整備に力を入れる動機が生まれます。

このように、「障害者雇用率制度」は、私たち求職者にとって、雇用の機会そのものを創出し、安心して働ける職場を見つけるための追い風となってくれる、非常に重要な制度なのです。

2-2.「合理的配慮」って、どんな助けがあるの?

「合理的配慮」という言葉は、障害のある方が安心して働く上で、とても大切なキーワードになります。これは、企業が障害のある従業員に対して、働きづらさの原因となるバリアを取り除くために行う、個々の状況に合わせた工夫やサポートのことです。特別な待遇というわけではなく、誰もが能力を発揮できるスタートラインに立つための「必要な調整」と考えると分かりやすいかもしれません。

・どんなことをお願いできる?具体的な配慮の例

合理的配慮の内容は、その人の障害の特性や、仕事の内容によって本当に様々です。ここでは、いくつかの場面に分けて、具体的な配慮の例を見ていきましょう。

  • 採用選考の段階での配慮
    • 例えば、面接会場の建物に段差がある場合にスロープを用意してもらう、面接の質問を文字で示してもらう、面接に支援機関のスタッフに同席してもらう、といったことが考えられます。
  • 仕事の環境・設備に関する配慮
    • デスクの高さを調整できるものにしたり、読み上げソフトや拡大鏡を導入したり、あるいは手すりを設置したりと、物理的な環境を働きやすくするための配慮です。
  • 働き方・業務の進め方に関する配慮
    • 通院のために勤務時間を調整する(フレックスタイム制の活用など)、ラッシュ時の通勤を避けるための時差出勤、集中して作業するために静かな席を用意してもらう、といった働き方の調整も含まれます。
    • また、口頭での指示が分かりにくい場合に、メールやチャットなど文字で伝えてもらう、一度にたくさんの指示を出すのではなく、一つずつ手順を区切って伝えてもらう、といった工夫も合理的配慮の一つです。

・大切なのは「話し合い」と「伝えること」

ここでとても重要なのは、合理的配慮は「企業と本人が話し合って決めていく」ということです。企業側も、あなたが何に困っていて、どのようなサポートがあれば働きやすくなるのか、すべてを把握しているわけではありません。

ですから、まずはあなた自身が、「自分の得意なこと・苦手なこと」「こういう状況だと働きやすい」「こういうサポートがあると、もっと能力を発揮できる」といったことを、ご自身の言葉で伝えることが第一歩になります。

もちろん、企業にとって「過重な負担」となるような、あまりにも大規模な設備投資や、事業の運営を根本から変えてしまうような配慮までを求めることは難しい場合があります。しかし、法律では、企業は「合理的配慮」を提供する義務があると定められています。

「こんなことをお願いして良いのだろうか」と一人で抱え込まずに、まずは採用担当者や入社後の上司に相談してみることが大切です。お互いにとって一番良い方法を一緒に見つけていく、という前向きな姿勢でコミュニケーションを取ることで、あなたが安心して長く、そして生き生きと働ける環境を整えていくことができるでしょう。

3. 障害者が仕事を見つけるときに使える国の制度とサービス

3-1.国や自治体、専門機関が提供するサポートって?

「働きたい」という気持ちを支え、就職活動を具体的にサポートしてくれる場所は、企業の中だけでなく、社会にもたくさんあります。国や自治体、あるいは専門的な知識を持つ民間の機関が提供する支援サービスを上手に活用することで、一人で悩まず、よりスムーズに仕事探しを進めることができますよ。

・あなたの街の身近な相談窓口「ハローワーク」

まず、最も身近な相談窓口の一つが、全国各地にある「ハローワーク(公共職業安定所)」です。ハローワークには、障害のある方の就職を専門にサポートする「専門援助部門」が設置されています。

ここでは、単に求人を紹介してくれるだけでなく、専門の相談員があなたの状況や希望をじっくりと聞き、どんな仕事が向いているか、どんな準備が必要かといったキャリアカウンセリングを行ってくれます。また、就職に必要なスキルを身につけるための「職業訓練(ハロートレーニング)」の案内も受けることができます。何から始めていいかわからない、という時は、まずハローワークの専門窓口を訪ねてみるのが良いでしょう。

・より専門的なサポートを提供する「地域障害者職業センター」など

ハローワークと連携しながら、より専門的で一人ひとりに合わせた支援を提供してくれるのが「地域障害者職業センター」です。ここでは、専門のカウンセラーによる職業評価(あなたの得意なことや課題を整理してくれます)や、実際に働き始めるためのリハビリテーション計画の作成、さらには就職後の定着支援まで、幅広いサポートを行っています。

その他にも、障害のある方の就労と生活を一体的に支援する「障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)」や、特定の分野に特化したNPO法人、民間の転職エージェントなども、それぞれ特色のある支援を提供しています。

・大切なのは、一人で抱え込まないこと

仕事探しは、時に孤独を感じたり、不安になったりすることもあるかもしれません。しかし、日本には、あなたの「働きたい」という気持ちを応援し、専門的な知識でサポートしてくれる機関がたくさんあります。

これらの支援サービスは、多くの場合、無料で相談することができます。大切なのは、「自分一人で何とかしなくては」と抱え込まず、まずはこうした専門機関に相談してみることです。あなたに合ったサポートを見つけることが、希望する働き方を実現するための、確かな一歩となるはずです。

3-2.就労継続支援(A型・B型)など、働くための選択肢

「一般企業でフルタイムで働くのは、今の自分には少しハードルが高いかもしれない」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。そのような場合でも、障害のある方の「働きたい」という気持ちをサポートするための、多様な選択肢があります。その代表的なものが、「就労継続支援」という福祉サービスです。これには、主に「A型」と「B型」の2つのタイプがあります。

・「A型事業所」の特徴:雇用契約を結んで働く

就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで働くスタイルです。雇用契約があるため、基本的には給与が支払われ、法律で定められた最低賃金以上が保証されるのが大きな特徴です。

一般企業への就職は難しいけれど、一定の支援がある環境であれば、安定して働く能力のある方が主な対象となります。勤務時間や日数も事業所によって定められており、社会保険の適用対象となる場合もあります。一般就労へのステップアップを目指す方のための、サポートを受けながら働く場所、とイメージすると分かりやすいかもしれません。

・「B型事業所」の特徴:自分のペースで、無理なく働く

一方、就労継続支援B型は、事業所と雇用契約を結ばずに、比較的自由なペースで働くスタイルです。大きな特徴は、ご自身の体調や状況に合わせて、週に1日や1日数時間といった、短時間からの利用が可能な点です。

雇用契約ではないため、お給料という形ではなく、行った作業に対して「工賃」が支払われます。一般就労やA型事業所での勤務が難しい方でも、無理なく社会参加をしながら、スキルを磨き、工賃を得ることができます。

私たちカチカも、このB型事業所にあたります。 在宅でのWebデザインやライティングといったクリエイティブな作業を通じて、ご自身のペースでスキルを磨きながら、工賃を得ることができる環境をご提供しています。

・自分に合った働き場所を選ぶということ

一般就労、A型、B型、どの働き方が「良い」「悪い」ということは一概には言えません。最も大切なのは、現在のご自身の体調や持っているスキル、そして「これからどうなっていきたいか」という目標に合わせて、最適な場所を選ぶことです。

それぞれの特徴を理解し、必要であれば支援機関のスタッフなどにも相談しながら、ご自身が最も輝ける働き方を見つけていきましょう。

4. まとめ:知って活用!障害者雇用で自分らしい働き方を見つけよう

ここまで、障害のある方の就職活動を支える、様々なルールや制度について見てきました。障害者雇用が大切にされる社会的な背景から、私たちの働き方を守る「障害者雇用促進法」、具体的な雇用の機会を生み出す「法定雇用率」、そして安心して働くための「合理的配慮」や、ハローワーク、就労継続支援といった各種サポートまで、多くの仕組みがあることをご理解いただけたかと思います。

これらの法律や制度は、ただ存在するだけでなく、私たちが「知って、活用する」ことで、初めて大きな力になります。「法定雇用率があるから、障害者雇用の求人が出やすいんだな」「合理的配慮は、相談して一緒に考えていけるものなんだ」「一人で悩んだら、専門機関という頼れる場所があるんだ」と知っているだけで、仕事探しに対する見方や気持ちが、少し変わってくるかもしれません。

一般企業への就職、A型事業所、B型事業所など、働くための選択肢は一つではありません。大切なのは、これらの情報を武器に、ご自身の現在の状況や将来の目標と向き合い、あなたに合った、あなたらしい働き方を見つけ出していくことです。

この記事が、そのための第一歩となれば幸いです。

もし、その選択肢の一つとして、「自分のペースで、在宅でクリエイティブなスキルを磨きたい」とお考えでしたら、私たちカチカ(就労継続支援B型)がお手伝いできることがあるかもしれません。どうぞお気軽にご相談ください。あなたの「働きたい」という気持ちを、私たちは全力で応援します。

このテーマの全体像はこちら:「在宅勤務の障害者雇用と求人の現状を徹底解説」

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