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はじめに
「障害者手帳を取ろうと思っているけれど、仕事探しにどう活かせばいいか分からない」
「障害者雇用ってよく聞くけれど、具体的にどんなメリットがあるの?」
もしあなたが今、そうした疑問や不安を感じているなら、この記事はきっとあなたの力になります。
この記事では、障害者手帳が仕事探しにおいて具体的にどのようなメリットをもたらすのか、そしてそのメリットを最大限に活かすためのポイントを、分かりやすく解説していきます。手帳の種類や取得方法といった基本から、あなたの状況に合った働き方を見つけるヒント、在宅ワークでのメリットまで、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
この記事を読めば、障害者手帳を持つことの可能性を理解し、自信を持って仕事探しの一歩を踏み出すことができるはずです。
1. まずは基本から、障害者手帳の種類と取得方法
1-1. 障害者手帳ってどんな種類があるの?
「障害者手帳」と一言でいっても、実はその目的や根拠によって、いくつかの種類に分かれています。これは、障害の特性が一人ひとり異なるため、それぞれの状況に合わせたサポートを提供できるように、制度が整えられているからです。
ご自身の状況に合った支援を正しく理解し、活用していくためにも、まずはどのような種類の手帳があるのか、その全体像を知っておくことが大切です。ここでは、主な3つの障害者手帳について、それぞれの特徴と役割を見ていきましょう。
・身体障害者手帳
まず、3種類ある手帳の中でも、比較的広く知られているのが「身体障害者手帳」です。
この手帳は、「身体障害者福祉法」という法律に基づいて交付されるもので、病気やけがなどにより、身体の機能(視覚、聴覚、手足の動き、あるいは心臓や呼吸器などの内部機能)に、一定以上の永続的な障害がある方を対象としています。
手帳には、障害の種類や程度に応じて1級から7級までの等級があり、この等級によって受けられる支援の内容が変わってくるのが特徴です。仕事探しにおけるサポートだけでなく、日常生活や社会生活をよりスムーズに送るための、様々なサービスの基盤となる大切な手帳です。
・療育手帳
次に、知的障害のある方を対象として交付されるのが「療育手帳」です。
この手帳は、他の手帳と少し成り立ちが異なり、特定の法律ではなく、国(厚生労働省)のガイドラインに基づいて、各都道府県や指定都市が独自の要綱を定めて運営しています。そのため、お住まいの地域によって「愛の手帳」(東京都)や「みどりの手帳」(さいたま市)など、名称が異なる場合があるのが大きな特徴です。
療育手帳は、知的障害のある方が一貫した指導や相談、各種の支援サービスを受けやすくすることを目的としています。障害の程度に応じて区分(等級)が判定され、その区分によって受けられるサポートの内容が変わってきます。
・精神障害者保健福祉手帳
最後に、精神障害のある方の自立と社会参加をサポートするための手帳が、「精神障害者保健福祉手帳」です。
この手帳は、「精神保健福祉法」という法律に基づいて交付され、統合失調症やうつ病、てんかん、発達障害など、様々な精神疾患により、長期にわたり日常生活や社会生活への制約がある方を対象としています。
身体障害や知的障害とは異なり、精神障害は外見から分かりにくい場合も多いですが、この手帳は、ご本人が必要な支援や配慮を受けやすくするための大切な役割を果たします。障害の程度に応じて1級から3級までの等級があり、税金の優遇措置や公共料金の割引など、様々なサービスを受けるための証明となります。もちろん、障害者雇用枠での就職活動においても、この手帳を持っていることが応募の前提となる場合があります。
1-2. 手帳を取得するまでの一般的な流れ
・ どこに相談?必要なものは?
障害者手帳の申請を考え始めたとき、「まず、どこに行けばいいの?」「何が必要なんだろう?」と、具体的な手続きが気になりますよね。ここでは、相談先から申請に必要なものまで、一般的な流れを少し詳しく見ていきましょう。
最初のステップとして、相談できる場所は主に2つあります。
一つは、お住まいの市区町村の障害福祉担当窓口です。ここは、申請手続きの公式な窓口であり、申請に必要な書類一式をもらえたり、その地域での詳しい手続きの流れを教えてもらえたりします。
もう一つが、日頃からかかっている主治医です。手帳の申請には、医師が作成した「診断書・意見書」が不可欠となります。そのため、まずは主治見に「手帳の取得を考えているのですが」と相談し、ご自身の状況が手帳の交付対象となるか、診断書を書いてもらえるかを確認することが、実質的なスタートとなります。
申請に必要となる主なものは、以下の通りです。(自治体によって異なる場合があります)
- 申請書: 市区町村の窓口で受け取ります。
- 医師の診断書・意見書: 窓口で受け取った指定の様式で、医師に作成を依頼します。
- 本人の顔写真: 証明写真として、指定されたサイズの写真が必要になります。
- マイナンバーが確認できる書類: マイナンバーカードや通知カードなどです。
これらの書類を揃えて窓口に提出すると、審査が始まります。審査には1〜2ヶ月程度の期間がかかるのが一般的です。審査で認定されると、交付決定の通知が届き、後日、窓口で手帳を受け取ることができます。
何から始めればよいか分からない場合は、まずはお住まいの地域の障害福祉担当窓口に問い合わせてみるのが良いでしょう。
2. 仕事探しが有利になる、障害者手帳のメリット
2-1. メリット①:「障害者雇用枠」という選択肢が生まれる
・応募できる求人の幅が広がる
障害者手帳を持つことで得られる大きなメリットの一つは、応募できる求人の「選択肢」そのものが増えることにあります。
仕事を探す際、私たちは「一般雇用枠」の求人を見ることができますが、これは障害の有無にかかわらず、誰もが応募できる競争の場です。障害者手帳を持つことで、あなたはそれに加え、「障害者雇用枠」という、手帳を持つ人だけが応募できる、もう一つの求人市場への扉を開くことができます。
大切なのは、これが「どちらかを選ぶ」という話ではない、という点です。あなたは、一般雇用枠の求人にも、障害者雇用枠の求人にも、両方に応募する権利を持っています。つまり、単純に検討できる求人の母数が増え、より多くの選択肢の中から、ご自身の希望やスキルに最も合った仕事を見つけ出せる可能性が高まるのです。
・ 配慮やサポートを受けやすくなる
障害者雇用枠で仕事を探すことの、もう一つの大きな安心材料は、入社後の働き方について、必要な配慮やサポートを得やすいという点です。
これは、「障害者雇用枠」での採用が、企業側にとって「障害のある方が入社する」ということを前提とした採用活動だからです。一般の採用枠とは異なり、採用担当者や配属先の部署が、障害のある方が働く上でどのようなサポートが必要になるかをあらかじめ想定し、準備しているケースが多くあります。
例えば、社内に相談窓口が設けられていたり、業務内容や勤務時間を調整しやすい体制が整えられていたり、といった環境がその一例です。このような土壌があるため、働く側も「こういう配慮があると助かります」といった相談がしやすく、お互いにとってより良い働き方を、入社後のミスマッチを減らしながら見つけていきやすい、というメリットがあります。
2-2.メリット②: 就職活動と生活を支えるサポートが得られる
・ 障害年金や各種手当を受けられる
障害者手帳を持つことで、障害基礎年金や各種手当といった、生活を支えるための経済的なサポートを受けられる可能性があります。
ここで大切にしたいのは、「仕事を始めたら、こうした手当はもらえなくなってしまうのでは?」という心配についてです。もちろん、収入によっては支給額が変わる場合もありますが、多くの場合、働きながらでも、これらの経済的なサポートを受け続けることは可能です。
これらの制度は、障害のある方が経済的な安心感を得ながら、社会参加を目指せるように設計されています。つまり、仕事で得られる収入に、これらの手当が加わることで、より安定した生活基盤を築くことができるのです。この安心感は、焦らずに自分に合った仕事を探したり、新しいスキルを身につけたりするための、大きな支えとなるでしょう。
・ 職業訓練や支援サービスを利用できる
障害者手帳は、仕事を探す上で、あなた一人では得られない専門的なサポートや、スキルアップの機会を得るための「扉」を開けてくれる役割も持っています。
就職活動は、時に情報収集や自己分析、企業とのコミュニケーションなど、多くのエネルギーを必要とします。そんな時、ハローワークの専門窓口や、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所といった専門機関は、あなたの状況や希望を理解し、伴走してくれる心強いパートナーとなります。
これらの支援サービスを活用する大きなメリットは、単に求人を紹介してもらうだけでなく、客観的な視点からあなた自身の強みや適性を見つけ出す手伝いをしてくれたり、就職に必要なスキルを身につけるための「職業訓練」に参加できたりする点にあります。こうした準備期間を持つことで、より自信を持って、ご自身の希望に合った仕事探しに臨むことができるでしょう。
2-3.メリット③: 障害者手帳が「在宅ワーク」を後押しする
近年、働き方が多様化する中で、「在宅ワーク」は障害を持つ方々にとって、通勤の負担軽減や体調管理のしやすさから、非常に魅力的な選択肢となっています。実は、障害者手帳を持っていることが、この在宅ワークという働き方を実現する上で、大きなメリットになることをご存知でしょうか。
ここでは、障害者手帳が在宅ワークの機会をどのように広げ、安定した就労を支援するのか、具体的な理由を解説します。
・企業側の「合理的配慮」が在宅ワークを可能にする
障害者雇用促進法により、企業は障害を持つ従業員に対して「合理的配慮」を提供することが義務付けられています。在宅ワークもこの合理的配慮の一環として検討されるケースが増えています。
例えば、以下のような形で在宅ワークが合理的配慮として提供されることがあります。
- 通勤負担の軽減: 交通機関の利用が困難な場合や、人混みが体調に影響する場合、在宅での勤務を認めることで、通勤に伴う心身の負担を大幅に減らすことができます。
- 体調管理の柔軟性: 定期的な休憩や、急な体調不良時の対応など、オフィスでは難しい細やかな体調管理を自宅で柔軟に行うことができます。
- 集中できる環境の確保: オフィス特有の騒音や刺激が苦手な場合、自宅であれば集中しやすい環境を自分で作り出すことが可能です。
企業側は、障害者手帳を持つ従業員に対しては、こうした個別のニーズに合わせた配慮を積極的に検討する義務があるため、結果的に在宅ワークという選択肢が広がりやすくなるのです。
・障害者雇用枠の在宅求人が増加傾向にある
インターネットの普及と働き方改革の影響で、障害者雇用枠でも在宅勤務を前提とした求人が増えてきています。特に、IT関連職(プログラマー、Webデザイナー、データ入力など)や事務職、コールセンター業務など、場所を選ばずにできる仕事でその傾向が顕著です。
障害者雇用枠の求人は、企業が障害特性への理解があるため、一般枠の在宅求人よりも安心して応募できるというメリットがあります。また、必要なITツールの導入補助や、オンラインでの定期的な面談など、在宅で働く上でのサポート体制が整っている企業も少なくありません。
・就労移行支援事業所などによる在宅就労サポート
障害者手帳を持っている方が利用できる就労移行支援事業所などでは、在宅での就労を目指す方へのサポートも積極的に行っています。
- 在宅ワークに必要なスキル習得支援: パソコン操作やオンラインコミュニケーションツールの使い方、情報セキュリティに関する知識など、在宅で働く上で必須となるスキルを学ぶことができます。
- 在宅求人の紹介: 障害に配慮のある在宅求人情報を豊富に持っており、個人の状況に合った求人の紹介や応募書類の添削、面接練習など、きめ細やかなサポートを受けられます。
- 自宅の環境整備に関するアドバイス: 在宅ワークに適した作業環境の作り方や、必要なツールの導入に関するアドバイスなども提供される場合があります。
このように、障害者手帳を持っていることで利用できる公的支援やサービスが、在宅ワークへの道筋をより具体的に示し、安定した就労を後押ししてくれるのです。
3. 障害者手帳を活かして仕事を探すポイント
3-1. 働き方の選択:「オープン就労」と「クローズ就労」
・ 「オープン就労」と「クローズ就労」の違い
障害者手帳を活かした仕事探しを考える上で、まず最初に知っておきたいのが、「オープン就労」と「クローズ就労」という二つの働き方の選択肢です。どちらを選ぶかによって、企業との関わり方や受けられるサポートが大きく変わってきます。
- 「オープン就労」: 企業に対して、ご自身に障害があることを伝えた上で、就職活動を行うスタイルです。主に「障害者雇用枠」での応募がこれにあたりますが、一般の採用枠で障害を開示して応募する場合も含まれます。
- 「クローズ就労」: 企業に障害があることを伝えず、一般の採用枠で、障害のない方と同じ条件で就職活動を行うスタイルを指します。
この二つの最も本質的な違いは、「企業に対して、働きやすくなるための配慮(合理的配慮)を求められるかどうか」という点にあります。オープン就労では、障害の特性に合わせて働きやすい環境を企業と一緒に作っていくことができますが、クローズ就労では、基本的にそうした配慮を求めることは難しくなります。どちらが良い・悪いというわけではなく、ご自身の状況や仕事に求めるものによって、最適な選択は異なります。
・障害を開示するメリットと、伝えるタイミング
障害を開示して就職活動を行う「オープン就労」は、ご自身の働きやすさに直結する、多くのメリットを持っています。入社後のミスマッチを防ぎ、安心して長く働き続けるためには、障害の特性を正しく理解してもらい、必要なサポートについて事前に話し合える環境がとても大切になります。
では、どのタイミングで障害について伝えるのが良いのでしょうか。これには決まった正解はありませんが、一般的には「応募時」「面接時」「内定後」といったいくつかのタイミングが考えられます。
例えば、応募時に伝えることで、最初から障害者雇用枠での選考に進めたり、面接の段階で必要な配慮をお願いできたりします。一方で、まずは自分のスキルや経験を純粋に評価してもらいたい、という考えから、面接が進んだ段階や内定後に伝えるという選択肢もあります。ご自身の障害の状況や、企業に求める配慮の内容、そしてご自身の性格などを踏まえ、最も納得のいくタイミングを戦略的に選ぶことが重要です。
3-2.「オープン就労」を選ぶ場合に考えておきたいこと
・必要な配慮をあらかじめ整理する
「オープン就労」を選び、企業に障害への配慮を求める場合、ただ漠然と「配慮してほしい」と伝えるだけでは、なかなか具体的なサポートには繋がりません。大切なのは、面接などの場で企業側と円滑にコミュニケーションをとるために、あなた自身が、自分に必要な配慮を事前に理解し、整理しておくことです。
これは、いわば「自分の取扱説明書」を作成するようなイメージです。例えば、「どのような環境だと集中しやすいか」「どのような業務が得意で、どのような作業には少し工夫が必要か」「通院のために、どのような勤務時間の調整が必要か」などを、一度自分の中で具体的に言語化してみましょう。
事前に考えを整理しておくことで、面接の場で慌てることなく、ご自身の状況と必要なサポートについて、落ち着いて、かつ的確に伝えることができるようになります。これは、企業側にとっても、あなたが自己分析をきちんと行い、働く意欲があることの証として、ポジティブな印象を与えることに繋がるでしょう。
・特性を自分の強みと結びつける
「オープン就労」で障害について伝える際、単に「できないこと」や「必要な配慮」を話すだけでなく、ご自身の障害の特性を、仕事における「強み」として捉え直し、アピールするという視点を持つことは、非常に有効なアプローチです。
これは、「短所を長所に言い換える」という自己PRの手法に近いかもしれません。例えば、「こだわりが強く、一つのことに集中しすぎる傾向がある」という特性は、見方を変えれば「一つのタスクに対して、非常に高い集中力と正確さで、粘り強く取り組むことができる」という、素晴らしい強みになります。同様に、「対人コミュニケーションに少し時間がかかる」という特性は、「相手の話を深く聞き、慎重に物事を考えることができる」という長所として伝えることもできるでしょう。
このように、ご自身の特性を客観的に理解し、それが応募する仕事内容とどのように結びつくのかを具体的に示すことで、採用担当者はあなたの持つポテンシャルをより深く理解し、活躍のイメージを持ちやすくなります。これは、他の応募者にはない、あなたならではのユニークな魅力として、大きなアピールポイントとなるはずです。
3-3.「クローズ就労」を選ぶ場合に考えておきたいこと
・合理的配慮を求められない、ということ
「クローズ就労」を選ぶ際に、まず最初に理解しておきたい最も重要な点が、原則として企業から「合理的配慮」を受けることが難しくなる、ということです。
企業は、障害があることを把握している従業員に対してのみ、法律に基づいた合理的配慮の提供義務を負います。そのため、障害を開示していない場合、たとえ業務に困難を感じることがあったとしても、それを障害が理由であるとして、会社側に特別なサポートや環境の調整を求めることは難しくなります。
例えば、体調の波によって勤務時間の調整が必要になったり、特定の作業環境では集中力を維持するのが難しかったりする場合でも、それらへの配慮を主張することは難しくなります。仕事の進め方から体調管理まで、すべてを他の社員の方と全く同じ条件の中で、自分自身の力で工夫し、乗り越えていくことが前提となる働き方、それがクローズ就労であると言えるでしょう。
・「障害」ではなく、一人の「個人」として評価されるということ
一方で、あえて障害を開示しない「クローズ就労」を選ぶ方々には、その背景に「自分のスキルや経験、人柄といった個性そのもので、正当な評価を受けたい」という強い想いがあることも少なくありません。
障害があることを伝えないということは、良くも悪くも、職場から「障害者」として特別な目で見られることがない、ということです。他の社員の方と同じ土俵に立ち、一人の「個人」として、純粋に仕事の成果や貢献度で評価される環境に身を置くことになります。
これは、時に厳しい側面もありますが、同時に、大きなやりがいや自信に繋がる可能性も秘めています。自分の力でキャリアを切り拓いていきたい、障害というフィルターを通さずに自分の価値を証明したい、という考え方も、自分らしい働き方を見つける上での、とても大切な選択の一つと言えるでしょう。
3-4.就職活動を続けるための心構え
・焦らず、自分のペースを大切にする
就職活動は、時に「長期戦」になることもあります。周りの友人や知人が次々と内定を得ていく中で、自分だけが取り残されているように感じ、焦りや不安を覚えてしまうこともあるかもしれません。
しかし、仕事探しは、決して他人と比べるものではありません。特に、心身のコンディションを整えながら活動を進める必要がある方にとっては、無理は禁物です。大切なのは、自分自身の「ペース」を理解し、それを守ること。疲れたら少し休む、気分転換をする時間も計画に含める、といった工夫が、結果的に活動を長く続けるための力になります。
就職活動は、ゴールが一つではない「マッチング」のプロセスです。早く決まることだけが成功ではありません。ご自身が納得のいく職場で、長く、そして安心して働き続けること。そのゴールを目指して、一歩一歩、自分のペースで進んでいきましょう。
・一人で抱え込まず、周りに相談する
就職活動は、時に孤独を感じやすいものです。特に、応募がうまくいかなかったり、将来への不安が大きくなったりした時、「すべて自分一人で何とかしなくては」と抱え込んでしまうこともあるかもしれません。
しかし、そんな時こそ、意識して周りの人々や専門機関を頼ることが、前向きな気持ちを保ち、状況を好転させるための鍵となります。家族や友人といった身近な人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが楽になることは多いでしょう。
さらに、ハローワークの専門相談員や、就労支援機関のスタッフといった「就職支援のプロ」に相談することには、大きなメリットがあります。一人で考え続けるよりも、多様な視点や支援を取り入れることで、新たな道が開けることは少なくありません。
3-5. 手帳を活かす上での注意点
・ 個人情報の取り扱い
最後に、ご自身の障害について企業に伝える際、その情報がどのように扱われるのか、気になる方もいらっしゃるかもしれません。
障害に関する情報は、非常にデリケートな個人情報です。そのため、企業は、あなたが伝えた情報を、採用選考や入社後の合理的配慮、適切な業務配置といった正当な目的以外で、本人の同意なく利用することは法律で禁じられています。
また、その情報を知る関係者も、業務上必要な最低限の範囲(例えば、直属の上司や人事担当者など)に限定することが求められます。情報が不必要に広まったり、差別や偏見の原因になったりすることがないよう、企業には厳重な管理体制が義務付けられています。こうしたルールがあることを知っておくことは、安心してご自身の状況を伝える上での、大切な前提となるでしょう。
・ 就職活動を始める前の「有効期限」の確認
意外と見落としがちなポイントですが、就職活動を始める前には、ご自身がお持ちの障害者手帳の「有効期限」を一度確認しておくことをお勧めします。
特に、精神障害者保健福祉手帳には2年間という有効期限が定められており、継続して利用するためには更新手続きが必要です。もし、就職活動の選考途中や、内定後の大切な時期に手帳の期限が切れてしまうと、障害者雇用枠での採用が取り消しになってしまうといった、予期せぬトラブルに繋がりかねません。
一方で、身体障害者手帳は、障害の状態が変わらない限りは更新の必要はありません。 また、療育手帳も、自治体によって異なりますが、再判定の時期が定められている場合があります。
ご自身の手帳がどのタイプで、有効期限や次の判定時期はいつなのかを事前に把握し、必要であれば早めに更新手続きを進めておくことで、安心して就職活動に集中することができます。
4. まとめ:障害者手帳を、自分らしい働き方への「パスポート」に
ここまで、障害者手帳が仕事探しにおいて、いかに多くのメリットをもたらし、また、それをどう活かしていけば良いのかについて、具体的なポイントを見てきました。
手帳の種類や取得方法といった基本から、それによって開かれる「障害者雇用枠」という選択肢、安心して働くための「合理的配慮」、在宅ワークでのメリット、そして就職活動を進める上での心構えまで、多くの情報に触れてきました。
大切なのは、障害者手帳を単なる「証明書」として捉えるのではなく、ご自身の状況を正しく理解し、必要なサポートを活用しながら、あなたらしい働き方を実現するための「パスポート」として、主体的に活用していくことです。
この記事で得た知識を一つの武器として、自信を持って、あなただけのキャリアへの第一歩を踏み出してください。
このテーマの全体像はこちら:「在宅勤務の障害者雇用と求人の現状を徹底解説」
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